【第20話】プレゼンの極意:内山悟志の「IT人材育成物語」(1/2 ページ)
いよいよ4人の勉強会の成果を部長たちに示すプレゼンテーションが次週に迫っていた。川口は、公式なプレゼンテーションの経験がない4人に、うまいプレゼンテーションの方法について説明することにした。
内山悟志の「IT人材育成物語」 前回までの連載記事。内山悟志の企業IT相談室(エグゼクティブ・コミュニティー)
これまで練り上げてきた検討結果が、構想したシナリオに基づきプレゼンテーション資料としてまとめられた。これを4人が分担し、リレー形式でプレゼンすることとなった。いつも接している自分たちの上司とはいえ、4人とも資料に沿ってプレゼンテーションをするというのは初めての経験であり、不安を隠せない表情をしていた。プレゼンテーションの本番を翌週に控えた勉強会では、川口がプレゼンテーションの手法を説明し、それを受けて4人がリハーサルを行うこととした。
導入部で流れをつかめ
川口は、プレゼンテーションの進め方とポイントについて説明を始めた。
「プレゼンテーションは一般的に、導入、本論、結論の3部から構成される(図)。まず導入部で、プレゼンテーションの目的を表明しておくことが望ましい。つまり、何かを決定したり、何かを理解してもらったりなど、どのような結果を望んでいるのか明示するのだ。目的を知らされることで聞く側は、どのような姿勢でプレゼンテーションを受けるべきかを決めることができ、集中度合いが高まる。話の範囲や前提があいまいだと理解が進まず、的外れの疑問を抱かせる原因となるので、これも導入で抑えておきたい。プレゼンテーションにおいて、はじめの5分は非常に重要で、ここで論点や前提が明確になっていないとその後の話は真剣に聞いてもらえないと思うべきだ」
さらに川口は続ける。
「はじめの5分が重要な理由はもう1つある。プレゼンテーションは、まさにライブの場だ。準備してきたとおりに粛々と進めるだけでは、目的を達成できるとは限らない。聞く人は、説明が難解すぎて理解できないかもしれないし、既に知っていることばかりで聞く気がそがれているかもしれない。聞く人の反応を見て話の難易度、使う用語、重点をおく内容を柔軟に変えることができたら素晴らしい。今回のように聞き手が社内の人で部署や役職があらかじめ分かっているとしても、反応をみることを怠ってはいけない。聞く人の中には、プレゼンテーションの内容に反対意見を持つ人がいるかもしれないし、理解が進んでいない人がいるかもしれない。誰に何を説明または説得するのかという目的に照らして、その目的が達成できそうなのか難しそうなのかを判断し、瞬時に軌道修正していかなければならない」
熱心に耳を傾ける4人を前に、川口の説明に熱が入って行った。
「本論では、課題、事実、仮説および論拠などを論理的に整理して説明する。複数の論点について述べる場合は、内容の区切りをはっきりさせるように心がけたい。今回のプレゼンテーションでは、話の節目ごとにプレゼンテーターが変わるので、その区切りがわかりやすいが、一人で行う場合は特に注意が必要だ。『ここまでは、○○についてご説明しましたが、次に△△について説明します。』というように、口頭で区切りを明言してもいいし、あらかじめ資料に見出しページを挿入しておいてもいい。話が単調にならないように、説明に費やす時間、声量、身振りなどにメリハリをつけるのも1つの工夫だ。最後に、結論を提示し、導入部で表明した目的が達成されたのかを確認してプレゼンテーションを終了する」
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