熱中症――毎年繰り返される悲劇:小松裕の「スポーツドクター奮闘記」(1/2 ページ)
今年も暑い夏がやってきました。毎年この時期に世間を騒がせるニュースが「熱中症」。残念ながら、今年も全国各地で事故が起きています。今回はスポーツにおける熱中症について考えます。
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今年は梅雨明け後、とても暑い日が続きました。7月までに2万人以上の人が熱中症で病院に救急搬送され、7月17日からの2週間で216人の方が亡くなったとの報道もありました。毎年この時期にはマスコミから熱中症に関するコメントを求められ、今年も何度かテレビやラジオでコメントしました。熱中症の危険性や救急処置、水分補給の重要性などはもっと多くの人に知ってもらわなければなりません。
熱中症の最も重症な状態を指す「熱射病」に陥ると、死亡する可能性が高いのです。かつては「日射病」などと呼ばれ、直射日光が関係する印象がありますが、熱中症は室内でも簡単に起きてしまいます。
熱中症事故はお年寄りや乳幼児だけではない
近年の都市化によるヒートアイランド現象や地球温暖化の影響もあって熱中症に対する知識が普及しているにもかかわらず、熱中症による死亡者数は減りません。毎年500人近くの方が亡くなっており、その多くが体温調節機能の衰えたお年寄りや脱水状態になりやすい乳幼児です。さらに、15歳前後の元気な中学生、高校生がクラブ活動中やスポーツ中などに熱中症で死亡するという事故も多いのです。
スポーツ活動中の熱中症の死亡事故は毎年起きています。「行ってきます」と元気に家を出た子どもが、次の日には変わり果てた姿で家に戻ってくるのです。家族にしてみれば、「どうして?」となかなか受け入れられません。スポーツの指導者が熱中症の知識に乏しいことが原因になる場合もあり、最近では訴訟の件数が増えています。スポーツによる熱中症事故は「無知」と「無理」によって健康な人でも生じるものですが、適切な予防措置さえ講ずれば防ぐことができるのです。
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