経営のアジアシフトこそ、新興市場で勝ち抜く道:ITmedia エグゼクティブセミナーリポート(1/2 ページ)
世界のあらゆる企業にとってアジアの新興国市場はすでに主戦場だ。中国の次の市場の選定を進める企業も少なくない。グローバル化に後れをとる日本企業は、新興諸国でいかに勝負すべきなのか。
日本企業にとっての“アジアで勝つ”とは
中国はもちろん、ASEAN諸国を中心とする目覚ましい経済成長を背景に、アジア市場に対する関心がグローバルで急速に高まっている。停滞する日本国内の経済状況を踏まえ、国内でも“アジアで勝つ”ことの重要性が各種メディアで強く叫ばれるようになった。
もっとも、“アジアで勝つ”が意味するところは、その企業が取る戦略によりさまざまだ。アジア各国の市場で売り上げを伸ばすこともその1つ。また、市場でリーディングポジションを確立するという意味にもとらえることができよう。さらに、自社の主要市場のアジアシフトに成功することだと定義する企業もあるだろう。
A.T. カーニーのパートナー(当時)で、同社中国オフィス会長を務めたこともある深沢政彦氏は、3月15日に開催された「第23回 ITmedia エグゼクティブセミナー」の特別講演で日本企業のアジア展開の現状について触れ、そのたどるべき道筋に関して次のように示唆した。
「その企業の目指す姿と戦略によって描くシナリオも当然異なるので、すべての企業にとって絶対に正しい解はもちろん存在しない。ただ、今後の市場成長性を考慮すれば、縮小する日本市場を主軸に据え、余力で海外売り上げを伸ばす、という従来の考え方では限界があるのは明らかだ。成長著しいアジア圏での事業展開に本腰を入れる時期は、しばらく前に来ていることを再認識すべきだ」(深沢氏)
新たに生まれる20万人の中間層が持つ購買力
多くの企業がアジア市場になぜ着目するのか。まず、人口がほぼ頭打ちである先進国とは対照的に、新興国では今後も人口が増大していくことがある。
また、単に数の増大だけでなく、人口動態も鍵になる。一般に、経済成長に伴う国の人口動態は、4つのステージを経ると言われる。
「ステージ1(高出生率・高死亡率)」を経て、「ステージ2(高出生率・低死亡率)」で人口が自然増した後、労働人口が増大と出生率の減少が重なる「ステージ3」に差し掛かる。この段階では、消費の中心が、従来の生活必需品から自動車やエンターテインメントなど便利さや快適さを目的としたものへシフトする。消費市場として豊かになるため「スィートスポット」とも呼ばれる。このように、その国の人口構成がどのステージにあるかによって、企業が得られるビジネス機会も異なるというわけだ。
さらに、新興国市場では「新たな消費」も増え続ける。例えば、中間層と呼ばれるセグメントがそれで、2025年までに約20億人の中間層が新たに増加し、そのほとんどはアジア地域で生じると予想されている。「この中間層のニーズをうまく掴んだのが、インドのTata Motorsだ。同社は、できる限り設計を簡素化した低価格車を市場に投入することで、これまで存在しなかった自国民向けの乗用車という新たなカテゴリーの開拓に成功した。このような市場の潜在力を考えれば、企業にとって決して無視できない存在であることは明白だろう」(深沢氏)
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