職場で話し掛けられなくなったのはなぜ?:世界を股にかける!──A global player!
今回は、ある架空のストーリーを例に、米国企業で新たに働く際の注意点などを学びましょう。
米国のある企業に入社した田中さんは、今日が初出勤日です。上司のスミスさんとは、午前中に顔合わせをしました。スミスさんは田中さんに親しく挨拶をし、自らデスクへ案内してくれました。
田中さんはスミスさんから、仕事の進め方や業務内容に関する説明を受けます。1時間後、スミスさんがオフィスへ戻ってきて、質問があるならいつでもどうぞと言ってくれました。田中さんのデスクは大部屋の一角にあり、ほかにはおよそ25人の同僚が働いています。彼らにはまだ田中さんは紹介されていません。
一段落した後、田中さんは自分の仕事に取り掛かりました。オフィスの廊下ですれ違ったり、カフェテリアで出会ったりするたび、同僚は気さくに話し掛けてきてくれます。ですが、そんな状況もわずか数日しか続きませんでした。
なぜ田中さんの同僚は彼のことを気に掛けなくなったのでしょうか。実は、以下の3つとも当てはまります。
(1)部署内の同僚の誰一人として、田中さんの面倒を見るよう上司から命じられなかったため、田中さんに対する責任感が薄れていった。スミスさんは、2、3日のうちに、そうした役割を誰かにふらなければならない。
(2)スミスさんは、田中さんが新しい仕事に慣れ、部署や周囲にとけ込むのに少し時間が必要だと考え、放置している。具体的な実地訓練に入る前に、田中さんのワーキングスタイルや仕事ぶりを把握しておきたいとも思っている。
(3)米国では、新参者がみずから周りに働き掛けることを期待するのが普通だ。企業に就職した場合でも、手取り足取り現場で仕事を教えてもらえる可能性は低い。田中さんは、自分から同僚に話し掛け、自己紹介するべきである。
米国企業では、とにかく自助努力が求められます。仕事をするのに必要な情報を集めるのは、田中さんの義務です。与えられるまで待っているのも、スミスさんや同僚がいろいろと教えてくれるべきだと不満を持つのも、どちらもNGですよ。
もっとも、こうした風潮は文化によって大きく異なり、仕事に必要な情報は社員みずから集めるのではなく、上司が彼らに提供するものだと考える文化も数多く存在しています。田中さんの場合は、自分から同僚に近づき、自己紹介をすべきでした。何か問題があれば、同僚や上司に助けを求めましょう。米国人は、尋ねられたことには丁寧に答えてくれます。田中さんが周囲にとけ込むには、自分自身でそうする努力をしなければならないのです。
著者プロフィール
ジャスミン・A・ワグナー(Jasmin A. Wagner)
ドイツ、ハンブルク出身。2歳の時に両親とともにヨットで世界一周の旅に出発。その後15歳になるまで世界30カ国以上を訪れる。この旅についてのニュースは世界中で評判になり、韓国で絵本が出版され、日本でも多くのメディアで紹介される。アジアには10〜15歳まで滞在。そのうち4年間は奄美大島に滞在。その後も両親は旅を続け、自分は1人でドイツに帰国。優秀な成績で学業を修め、経営管理学ディプロマ Diplom-Betriebswirt(BA)を取得。ドイツの有名自動車企業に就職後、28歳でエグゼクティブに抜擢される。
世界中の支社で働くうちに、それぞれの国に大きな特徴、強み、弱みがあることに気づく。コミュニケーションスキルでビジネスの成功に大きな差が出ることを痛感。ニューヨークにてイメージコンサルティングスキルを学ぶ。キャリアの傍ら、グローバルコミュニケーションやイメージコンサルティングセミナー、トレーニングを展開する。独、仏、英語、日本語を話す。空手初段。
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