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課題先進国ニッポンを再生するNTTデータのサービス・イノベーションNTT DATA Innovation Conference 2013リポート(1/2 ページ)

技術力と問題解決力により、既存のサービスをより高度なサービスに革新するのがサービス・イノベーション。課題先進国ニッポンを待ち受ける難題を解決するカギとなるサービス・イノベーションによって創造されたソリューションは、世界にも展開できるソリューションだ。

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 1月25日、NTTデータが「NTT DATA Innovation Conference 2013 New Growth, New Global――日本流グローバル戦略の可能性」を都内ホテルで開催。特別講演にNTTデータ 代表取締役副社長執行役員 パブリック&フィナンシャルカンパニー長 山田英司氏が登壇し、「サービス・イノベーションが課題先進国ニッポンを、そして世界を変える」をテーマに講演した。

課題山積の日本をいかに救うか


NTTデータの山田英司副社長

 日本は現在、さまざまな課題に直面している。この日本が抱える課題を、サービス・イノベーションでいかに解決できるのか。山田氏は「Aさんの家計は収入が40万円で、支出が78万円。毎月38万円の赤字という厳しい状況である。積み重なった借金は7382万円に上る。このAさんとは、まさに現在の"日本"のことだ」と講演をスタートした。

 現在、日本は収入が46兆1000億円で、支出が90兆3000億円。公債金収入が44兆2000億円で、累積債務は1085兆円に上る。財政面だけでも日本が大きな課題を抱えていることが分かる。また収益面を見ると公債残高は税収の17年分で、国民1人あたり556万円の借金を抱えていることになる。

 一方、実質GDP(国内総生産)成長率は0.3%であり、収入の伸びは、ほかの先進国と比べても、きわめて低いものとなっている。さらに少子高齢化、相対的貧困率の向上、過疎化、医療制度、インフラの老朽化など、日本はまさに課題先進国と言える。

 山田氏は、「日本は課題が多い国であるが、こうした課題の解決に必要なのがサービス・イノベーションである」と指摘する。

技術力+問題解決力でサービスを革新

 サービス・イノベーションとは、技術力と問題解決力により、既存のサービスをより高度なサービスに革新する考え方である。イノベーションという言葉は「技術革新」と訳されることもあるが、サービス・イノベーションにおいて技術は重要な要素の一つにすぎない。

 例えば発光ダイオードが発明されたことにより、蛍光灯がLED照明に変わった。これは「技術革新」によるイノベーションのひとつの例といえる。ただし技術の力だけでは、革新的なサービスを生み出すことはできない。

 「技術革新の力を最大限活用し世の中が抱える課題の本質を解決していく力、つまり問題解決力こそが、サービス・イノベーションの最も重要な要素である」(山田氏)

 この問題解決力は、さまざまな因数に分解することができるが、ポイントは「タテをつなぐ力」と「ヨコをつなぐ力」の2つである。

 「タテをつなぐ力」とは、長期的に取り組む力と高い視点、志を持つ力であり、「ヨコをつなぐ力」は、多様なステークホルダーを取りまとめて知恵を生み出す力である。

  サービス・イノベーションの例としては、携帯音楽プレイヤーがある。これまで音楽は室内でしか聞くことができなかったが、ソニーのウォークマンの登場により、音楽を携帯するという新しいライフスタイルが起こった。

 さらにフラッシュメモリやインターネットによる音楽配信という技術革新、ワクワクするような未来の生活スタイルを見せる力、顧客、パートナーを共感させる力などが加わり、アップルのiPodとiTunesという新たなサービスが誕生した。

 山田氏は、「社会の利便性を大きく向上させることができるのがサービス・イノベーションのメリットだ」と話している。

サービス・イノベーションで解決策を提示

 日本が抱える課題には、法制度の改正や国民意識の改善を要するものなど、ITの力だけでは解決できないものも多い。山田氏は、「サービス・イノベーションですべての課題を解決できるわけではない。ただ、新たな解決策を提示できる分野もかなりある」と話す。

 NTTデータのサービス・イノベーション事例として、CAFIS(Credit And Finance Information System)がある。CAFISは、百貨店やショッピングセンター、ガソリンスタンドなどの加盟店とクレジットカード会社、金融機関などをつなぎ、月間3億5000万件のカード決済データを処理する総合決済サービスである。

 特長として、24時間×365日のサービスを提供しており、オンラインでの利用可否照会やオンライン決済、非接触カードやスマートフォンに対応するなど、決済サービスの効率化を実現する。

 CAFISが登場する前は、決済作業は店舗裏でブラックリストを照合し、紙のエンボスプレスを行うなど、手作業により行われていた。ここに24時間×365日運用される大規模ネットワークという技術力と、業界の発展を支えて継続する力、およびさまざまな金融機関を束ねる力という問題解決力を加えることで誕生したあらたな決済サービスがCAFISだ。これによりクレジットカードが当たり前のように使われる時代が到来した。

 もう1つの事例として、橋梁モニタリングシステム「BRIMOS(BRIdge MOnitoring System)」がある。BRIMOSは、橋に数多くのセンサーを設置し、そのセンサーから吸い上げられる毎秒数千件のデータを分析することで、橋のひずみ、加速度、傾斜、変異などの状態をリアルタイムに検知することができる。

 従来、道路状況の把握には、熟練者による目視確認が必要だった。しかしモニタリング技術や多角的なデータのリアルタイム分析などの技術力と、産学連携による研究開発を推進する力などの問題解決力により、新たな橋梁モニタリングシステムであるBRIMOSが誕生した。これにより「熟練者に頼ることなく、橋の状況が把握できるようになった」と山田氏は言う。

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