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IT投資の効果を実感するには首尾一貫した取り組みが重要NTT DATA Innovation Conference 2013リポート(1/2 ページ)

IT投資効果が実感できる正のスパイラルへの移行のためには、システムやプロセス、人、組織など首尾一貫した取り組みの実現と、成長のための新規IT投資拡大が必要。

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 1月25日、NTTデータが「NTT DATA Innovation Conference 2013 New Growth, New Global――日本流グローバル戦略の可能性」を都内ホテルで開催。特別講演にNTTデータ 代表取締役副社長執行役員 エンタープライズITサービスカンパニー長 萩野善教氏が登壇し、「これからのIT活用への示唆――“ 世界の知恵”の活用へ」をテーマに講演した。

日本のIT投資動向と課題

 効率的な事業運営や適切なガバナンスの確立のためにはITの活用が鍵になる。グローバルの先進企業では、日本とは異なるITの活用方法により効果を上げている事例もある。


NTTデータの萩野善教副社長

 「グローバルにビジネスを展開している企業であっても、国内を中心にビジネスを展開している企業であっても、大いに参考になる事例がある。先進的なグローバル企業の事例から、効果的なIT活用に向けた組織の運営や業務の標準化、ベンダーとの役割分担などを考察する」(萩野氏)

 日米間における過去20年のIT投資を比べると、米国は1990年を100とした場合、2010年には8倍となっている。この20年間にITバブルの崩壊やリーマンショックなどを経験しているが、復調傾向にあるのが米国の現状である。一方、日本のIT投資は、1990年を100とした場合、2010年のIT投資は伸びているとはいうものの2倍程度に過ぎない。これにより、日米間のIT投資額に大きな差がついている。

 なぜ日米のIT投資額の差は拡大しているのだろうか。理由の1つに日本経済の停滞が挙げられる。IT投資額と同様に、GDP(国内総生産)も日米間で大きな差になっている。また日本企業のIT予算比率の低さも理由の1つといえる。売上高に占めるIT予算比率は、日本が平均1.2%であるのに対し、米国は平均3.7%であり、3倍の差がついている。

 「IT予算の用途では、米国ではIT予算の3分の1が新規投資に割り当てられており、日本は4分の1である。日米の同じ売上高の企業があるとすると、新規投資は4倍の差があり、日本企業は新規案件に対するIT投資が非常に少ないということがいえる」(萩野氏)

 また売上拡大を目的とした「攻めの投資」とコスト削減を目的とした「守りの投資」では、守りの投資は日米間にあまり差はないが、攻めの投資では米国は日本の3倍以上となっている。さらにIT投資効果に対する評価では、米国企業が60%程度の投資効果を実感しているが、日本企業では40%程度しか効果を実感していない。

 萩野氏は、「こうした状況をまとめてみると、あくまで仮説ではあるが、日本企業はIT投資の効果を実感できないためにIT投資に消極的になり、必要最低限の投資で維持管理が中心というIT投資の“負のスパイラル”に陥っているといえる」と話す。それでは、どうすればIT投資の負のスパイラルから抜け出すことができるのだろうか。

効果的なIT活用に向けて

 「情報システムを構築し、安定稼働させることはもちろん重要。しかし、それだけでは十分な投資効果を得ることはできない。安定した情報システムを基盤に、ビジネスプロセスを変革して業務を効率化したり、ビジネスモデルを変革して商品・サービスを創出し、競争力を強化したりと、一歩踏み込んだIT投資を目指し、効果を最大化しなければならない」(萩野氏)

 ビジネスプロセスの変革やビジネスモデルの変革に対する経営層の期待は高いものの、IT部門はその期待に十分に応えられていないのが実情だ。それでは、どうすれば効果を上げることができるのか。萩野氏は、「要求品質を確保したシステム構築ということは大前提。さらにプロセスや人・組織に関して、首尾一貫した取り組みによる全体最適が必要になる」と言う。

 例えば、eコマース取引における翌日配送や新商品を全世界同時発売するための取り組みを推進している企業がある。こうした企業は、システム、プロセス、人・組織が、首尾一貫して、ビジネスプロセスの変革、ビジネスモデルの変革に取り組むことが重要であることを理解している。

 「米国との比較になるが、米国企業に比べて日本企業は、首尾一貫した取り組みが困難な特性があるように感じる。米国企業は、多国籍の社員で構成されており、社員の入れ替えも激しいことから、文書化や形式知化、ナレッジ管理などを極めていかないと事業運営自体が成り立たない 」(萩野氏)

 一方、日本企業では終身雇用という伝統があり、社員の入れ替わりも少なく、かつ大多数が日本人であることが多い。こうした日本企業の特性は、強みを発揮する側面もあるが、効果的なIT活用に向けては、暗黙知が多くナレッジの共有が進みにくいのが阻害要因 となっている。

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