ビジネスに直結したソフトウェア開発を推進――性能や品質の向上に取り組むリクルートテクノロジーズ(1/2 ページ)
「リクナビ」や「SUUMO」「カーセンサー」など、日本最大級の情報サービスを展開するリクルート。そのサービスに不可欠なITソリューション。ビジネスに直結するソフトウェア開発をいかに推進しているのか。
就職情報サイトである「リクナビ」や不動産情報サイト「SUUMO」、中古車情報サイト「カーセンサー」、旅行情報サイト「じゃらん」、結婚情報誌「ゼクシィ」など、日本最大級の情報サービスを展開するリクルート。そのサービスおよび商品をITソリューションで支えているのがリクルートテクノロジーズである。
リクルートが提供するサービスは、性能の低下やバグによるサービスの停止が事業に大きな打撃を与えてしまう。そのため常にソフトウェアの性能や品質に目を光らせておかなければならない。そこで、ビジネスに直結したソフトウェア開発に対する取り組みについて、リクルートテクノロジーズ 執行役員 CTO、米谷修氏に話を聞いた。
リクルートテクノロジーズにおけるCTOの位置づけ
―― 日本企業では、最高技術責任者(CTO:Chief Technology Officer)という役割がまだまだ根付いていません。リクルートテクノロジーズにおけるCTOの位置づけを聞かせてください。
米谷 テクノロジーに特化して、より深めていくのがCTOのミッションです。現在、私はCTOとして新しい技術の開拓、さまざまなテクノロジーをいかに事業に展開するか、効率よく運用していくかに取り組んでいます。また、そのための組織のあり方についても試行錯誤を繰り返しています。サービスのほとんどをWeb上で提供している事業もあり、このような大規模開発になると商品そのものですからCTOとしての責任も重大です。
具体的には「開拓」「実装・展開」「運用」という3つのフェーズと、インフラソリューション、ビッグデータ、スマートデバイスといったソリューションとのマトリックスでマネジメントしています。かつては事業別に組織化していたこともありましたが、より技術に特化するために機能別にしました。
最先端の技術をリサーチして実証実験を行う「開拓」、そこでGOサインの出た技術をソリューションに仕立て、事業に適用する「実装・展開」、効率化と標準化を追求した「運用」とフェーズを分けて担当することにより、新しい技術でも素早く事業に展開することができます。
これを実現する組織が私が担当するITソリューション部(ITS)です。ITを活用してソリューションを提供するITSは「住まい」「人材採用」など特定の事業向けに開発するのではなく、テクノロジーにフォーカスしています。例えばスマートデバイスグループは、スマートデバイスに関する技術を極めたエンジニアが、スマートデバイスに特化したソリューションを開発しています。できるだけ標準化し、サービスや商品の内容に合わせて素早い展開ができるようにしています。
ITSで開発されたソリューションは、事業ごとのIT戦略の立案やビジネスニーズへの対応、業務課題の克服などを目的に、サービスの保守運用などを推進するグループで構成されるITマネジメント部(ITM)によって提供されます。ITMは、事業のニーズとITSが提供するソリューションをマッチングさせるという役割を担っています。そのため、ITSとITMがそれぞれの機能を最適化し、効果的にコラボレーションができれば最高の力を発揮できます。CTOは、ITソリューションだけでなく、事業やサービスが置かれている環境についても一定の理解も求められます。
―― 新しいテクノロジーは、どのように見つけてくるのでしょう。
米谷 アドバンスドテクノロジーラボ(ATL)と呼ばれるチームのエンジニアが、興味のあるテクノロジーを開拓してくるところからスタートします。このときエンジニアには、そのテクノロジーの将来性や事業への適合度よりも、まずは自身にとって「おもしろいか、おもしろくないか」で判断をさせるようにしています。ATLには、新しいものを見つける嗅覚や、結果的に将来「化ける」可能性の高い技術要素を「おもしろい」と思えるような感性を持ち合わせたエンジニアがいます。
ATLでは、まずリサーチのフェーズでそのテクノロジーの検証を行い、利用価値があるという判断になると、次にデベロップのフェーズでそのテクノロジーの実証を行います。最後は整理して型化することにより標準的に利用できるようにします。
―― 現在、ソリューションのグループは、明確に組織化されているのでしょうか。
米谷 現在、インフラソリューショングループやビッグデータグループ、サイトプランニンググループなど15のグループがあります。グループの発生には、研究開発をトリガーにしたプロダクトアウト型とニーズから発生するものがあります。
例えば、Hadoopを利用したビッグデータグループがプロダクトアウト型にあたります。4〜5年前に、Hadoopが米国で使われ始めたことから、まずATLチームのエンジニアがHadoopの研究を開始し、何に使えるかは分からないが、大量のデータを分散処理できるという実験をしていました。その後、ビッグデータで利用できるということで、ビッグデータグループに発展しました。
もうひとつは、ニーズから発生するグループです。例えば、急激に普及してきたスマートデバイスを活用するサービスや商品を、もっと高速に開発するためにはどうすればいいかということに取り組んでいます。このとき、ニーズを満たす最適なツールはどれなのかを検討し、さらにわれわれの環境にあったカスタマイズして活用しています。
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