日本の少子高齢化はビジネスチャンス――データ分析で2020年以降の日本を元気に(1/2 ページ)
IoTの世界では、さまざまなデバイスでデータが作成され、蓄積されていく。このデータを有効活用することで、ビジネスを差別化することができる。データ分析は、来るべき2020年の社会をいかに変化させるのだろうか。
「2020年 東京オリンピックに向けたビジネス機会」をテーマに開催された「エグゼクティブ・リーダーズ・フォーラム」に、ブレインパッドの代表取締役社長である草野隆史氏が登場。設立から10年間のデータ分析で培った経験とノウハウを生かし、「データ活用が変える2020年の社会」と題した講演を行った。
今後5年のデータ活用で未来が変わる
ブレインパッドは2004年に設立されたデータ活用専業の会社であり、企業の意思決定をデータ分析で支援することをミッションとしている。また同時に、データ分析のスペシャリストであるデータサイエンティストの育成にも注力している。草野氏は、「今後5年間、データの活用方法で未来が変わる。そこでデータ分析が重要になる」と話す。
2020年の東京オリンピック開催に向け、日本全体の景気がよくなっていくことが予測されるが、その一方で人口の減少と高齢化という課題も抱えており、東京オリンピック後の成長戦略も考えておく必要がある。草野氏は、「少子高齢化というと明るい話しになりにくいが、逆に考えればピンチはチャンスと考えることもできる」と語る。
「そこで鍵になるのがデータ活用である」と草野氏。海外でもデータは天然資源と位置づけられているくらいに、ポテンシャルが期待されている。いろいろなものがインターネットにつながるIoTの世界では、さまざまなデバイスでデータが作成され、蓄積されていく。これにより、リアルの世界のデータ化が進んでいくことになる。
データ活用でピンチをチャンスに
ある調査では、2020年にインターネットにつながっているデバイスは260億ユニット以上と報告されている。これは全世界の人口が複数個のデバイスを使っていることになる。このデータを分析することで、現状の課題を見える化し、生産性などを改善することができる。草野氏は、「ここに大きなポテンシャルが期待できる」と話す。
ただし日本においては、課題もある。データ活用において日本は消極的といわれていることである。国内においてビッグデータというキーワードが登場したのが2011年だが、すでに4年を経過しても他国に比べ取り組みが非常に遅いという調査結果も報告されている。「情報収集をするだけで、実際のアクションをしないのが日本の企業だ」と草野氏は言う。
ビッグデータには関心があるものの、最初の1歩を踏み出せていない状況といえる。日米の経営者にIT投資について調査した結果では、米国の経営者は75%が非常に重要であると答えているのに対し、日本の経営者は15%に過ぎない。ITを活用してビジネスを伸ばそう、ITを差別化要因にしていこうという発想の経営者が非常に少ない。
「結果として、ITシステムで生成されるデータを活用しようという企業が少なくなってしまうのが日本の現状といえる。これからデータを収集する仕組み、データを活用する仕組みを構築し、欧米企業に追いついていくことを考えると、日本企業にはかなりの努力が必要になる。2020年までの5年間を、これまでの5年間と同様に過ごしていたのでは、ピンチをチャンスに変えることはできない。逆に大ピンチに陥ってしまう可能性もある。いまなら大逆転も可能な最終打席に立っている。外せないPKを任されていると思わなければならない」(草野氏)。
ソフトウェア化が進む現在のビジネス
2020年に向け、企業ではどのような取り組みが必要なのか。草野氏は、「いま何が起きているのかを把握することである」と話す。現在、さまざまなビジネスがソフトウェア化している。これは2007年にスマートフォンが登場し、爆発的に普及、進化したことに起因する。手のひらに乗るデバイスが、いまやひと昔前のスパコン並みの性能を有している。
スマートフォンの普及拡大により、さまざまなコストが低減した。特にセンサーの価格が低下したことで、いろいろなセンサーが搭載され、このセンサーを利用して、さまざまなデータが収集されている。あとはこのデータを活用するソフトウェアを開発するだけで、リアルなビジネスを生み出すインフラが整っている。
「ネットの閉じた世界ではユーザー数や利用時間に制限があるが、制約の少ないリアルの世界にベンチャー企業がどんどん参入している状況である。いまやあらゆる業界がソフトウェア化され、データのトランザクションで価値創造される時代が広がっている。今後もこの流れは加速していくと考えている」(草野氏)
もう1つのトレンドとして、消費者と生産者の立ち位置が逆転していることが挙げられる。草野氏は、「クラウドサービスでは、年間1000円程度で1人あたり1テラバイトのストレージサービスを利用できるが、社員1人に1テラバイトを提供している企業はほとんどない。また家庭のネットワークの方が企業より高速なこともある」と話す。
企業よりも消費者の方が新しいアプリを使っている状況なのである。ソフトウェアも消費者向けはどんどん改善されて使いやすくなるが、企業向けのソフトウェアはそれほど積極的には改善されていない。最近のトレンドとして、ようやくB2C向けに開発されたインタフェースがB2Bのソフトウェアに適用されはじめた段階といえる。
「激しい競争の結果、最先端の技術やアイデアが無料あるいは低価格で消費者に利用され、それが企業システムに適用されている。これまでのように企業がお金をかけても消費者に与えられる影響力は限定的になり、消費者を企業が誘導できる状況ではなく、追いかけるものとなっている」(草野氏)
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