「やわらかい頭の作り方」――自ら柔軟に変化していくためのヒント:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)
グローバルに仕事をするために必要なことの1つは多様性を受け入れること。そのために必要なことの1つが思考の柔軟性である。一般に思考の柔軟性は、特定領域での知識や経験を積み重ねるほど失われてくる。いつまでも「やわらかい頭」で柔軟に新しい物事に対処していくにはどのようにすればよいだろうか?
この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。
ビジネス書の著者たちによる連載コーナー「ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術」のバックナンバーへ。
「柔軟な発想で業務に取り組まなければ変化する世界で生き残れない」
「頭がカチカチでは新しいアイデアは生まれない」
こんな文脈で、「頭がやわらかい」とか、逆に「頭が固い」とか「石頭」といった表現をわれわれは何気なく口にします。ただしもちろんこれは物理的な硬さではなく、考え方の姿勢を示しています。
「やわらかい頭」とは?
では一般に「頭がやわらかい」とはどういう人を指すのでしょうか? これは「頭の固い人」の逆と考えると分かりやすいかもしれません。例えば以下のような条件になるのではないでしょうか(かっこ内が頭の固い人)。
- これまでの常識にとらわれない(×過去の常識に固執する)
- 変化にすばやく対応する(×自らは決して変わろうとしない)
- 他人の意見を聞き入れる(×他人の意見を聞かない)
さらにこれらかっこ内の「頭の固い人」の共通点を考えてみると、「自分が正しい」という気持ちが人一倍強いということかもしれません?
したがって、まずは頭のやわらかい人への第一歩というのは、「常に自分が正しい」という認識を一度捨て去ってみることです。つまり何か意見の対立があったときに、「おかしいのは自分の方ではないか?」と最初に考えてみることです。「相手がおかしい」と決めつけるのではなく、「おかしいのは自分の方ではないか?」と考えることが気づきのきっかけとなります。
そのために必要なのが、全ての人間が思っている「思考の癖」(認知バイアス)を認識することです。おおむね「思考の癖」というのは「思い込み」という形で「やわらかい頭」にとっては否定的な方向に働きます。ただし、個人個人に固有の思い込みというのは、必ずしも悪い面ばかりではありません。その人しか出せないような個性的なアイデアというのは、ある意味このような特殊な思い込みの産物とも言えるからです。だからこのような「思考の偏り」を自分で認識した上でそれをプラスに転じて活用していく必要があるのです。
「自分中心」の発想からは決して逃れられない
人間の最大の「思考の癖」というのは、自分中心にしか物事を見られないということです。ある意味これは当たり前のことのようですが、ついついこれを忘れてしまうことが問題です。
「お客さまの立場で考える」というのはビジネスの鉄則ですが、これもどんなに「顧客志向」で考えている人でも所詮は「自分がお客だったら……」という思考の枠組みを簡単には超えられません。
同様に「他人の仕事より自分の仕事の方が大変だと思っている人」と逆に「自分は他人より楽をしている人」の数を比較したら、前者が(おそらく圧倒的に)多い結果となるでしょう。これは明らかに矛盾しています。
もう1つ例を挙げれば、われわれが他人との会話でついつい話してしまう(というより本当は一番話したいこと)のが「愚痴と自慢」ですが、自分が聞く立場になると、他人から最も聞きたくないのもこの2つではないでしょうか?だからこそ(「やわらかい頭」を持った)「聞き上手」というのはこの2つを何の苦もなく聞くことのできる人であり、「頭の固い人」や「思い込みの激しい人」というのは、大抵の場合普段からこの2つが多い人とほぼ一致するというのも納得が行きます。
このように、神様は人間を自己矛盾だらけの生き物に作っています。だからこれ自体は悪い事ではなく、重要なのはこれを普段からどこまで強く意識できるかです。
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