人が足りない、でもIT運用は止められない 従業員の生産性を守る“定期健診&予防医療”型のアプローチ
人材不足とIT管理の複雑化に悩むIT部門。トラブルの“消火係”から戦略部門へ変革する鍵は、従業員のデジタル体験(DEX)の可視化だ。日本HPが提唱する“予防医療型”IT運用のアプローチとは。
多くの企業が生成AIの実装やセキュリティ対策の強化を急ピッチで進めている。デジタルへの投資が成長の必須条件になっているが、足元では複雑化するマルチベンダー環境の運用や属人化したインフラ管理、頻繁にリリース・更新され続けるアプリケーションの管理などに担当者が忙殺されている。
背景には、多くの企業に共通する人材不足という課題がある。特にIT部門は限られた人員でIT環境を維持しなければならないが、ヘルプデスク業務に時間を割かれて戦略的業務に手が回らないケースは多い。
IT人材をトラブルの“消火係”から解放して、IT部門を経営の根幹を成す戦略部門へと変革するためには何が必要か。鍵を握るのは、従業員のデジタル体験(DEX:Digital Employee Experience)を可視化し、問題が深刻化する前に先回りして対処する発想だ。
ITmedia エグゼクティブ編集長の星原康一が日本HPの高木聡氏に、IT運用のボトルネックを解消するアプローチと、それを支えるプラットフォームの全貌を聞いた。
以下、敬称略。
「声の大きいユーザー」に引っ張られる現実
星原: ITmedia エグゼクティブが2025年に実施した読者調査では、ITリーダーたちが置かれているリアルな苦境が浮き彫りになっています。中でも、最も深刻な課題として挙げられたのが「人材不足」(41.4%)でした。高木さんがお客さまと接する中で感じる課題はいかがでしょうか。
高木: IT人材不足は各社共通の課題ですね。根本には、日本企業の多くがIT部門をいまだにコストセンターと位置付けている問題があります。限られた人員と予算でランサムウェア対策もAI活用もIT部門が主導せねばならず、コストを抑えながら企業の成長を支えるという難しい立場に置かれています。
星原: PCをはじめIT環境は「動いて当たり前」と捉えられがちです。
高木: その通りです。そのため、多少の不調があっても「わざわざIT部門に連絡するほどではない」と、ユーザーが抱え込んでしまう傾向があります。専門機関の調査だと、従業員の約半数が「問題を抱えてもIT部門に問い合わせず、我慢してやり過ごしている」という結果もあるそうです。従業員の我慢する期間が長引くほど、企業全体の生産性が低下することになるので注意が必要です。
星原: 「PCが不調だ」と自発的に問い合わせてくるのは、一部のユーザーということですか。
高木: IT部門に集まる声は“氷山の一角”に過ぎません。多くの場合、声を上げてくれるのは差し迫った人や声の大きい人です。IT部門は緊急対応が必要になった結果、全社規模で効果が見込まれる業務に手が回らなくなってしまいます。
重要なのは、声を上げないサイレントマジョリティーの状態を正しく把握することです。そのためには端末の情報を収集する管理ツールが不可欠ですが、アラートが膨大で管理者の判断が追い付かなかったり、設定が複雑で使いこなせなかったりするツールもあります。IT部門に必要なのは、一挙手一投足を見逃さない完全な監視ではなく、対応の優先度を見極める問題分析の仕組みです。
「事後対応」から「事前対処」へ “定期健診&予防医療”の仕組み
星原: それをサポートするプラットフォームが「HP Workforce Experience Platform」(WXP)ですね。
高木: はい。これまでは「従業員から申告があってから直す」という事後対応が主体でしたが、「申告がない段階でも重大な不具合に発展する前に先回りして手を打つ」という事前対処へのシフトが必要です。具合が悪くなってから治療するのではなく、“定期健診”で予兆をつかむ“予防医療”に近い発想です。
星原: どんな仕組みで分析するのでしょうか。
高木: WXPは世界各国で稼働する2460万を超えるエンドポイントから収集したデータをAIで分析して、OSパフォーマンス、セキュリティ、ネットワーク、アプリケーションなどの現状やボトルネックを可視化します。自社の状態をスコア化して業界標準スコアと比べることもできるので、優先投資すべき領域を経営層に説明しやすいのも特徴です。
エージェントの軽さも強みです。一般的なエージェントは常時通信するものが多いですが、WXPは一定間隔でデータを送信してセッションを切るため、ネットワーク帯域やPCリソースの消費を抑えられます。従業員の日常業務を妨げないことを最優先に設計しています。
星原: WXPは従業員の端末データを蓄積していると聞きました。普段の状態が把握できると、トラブルシューティングの難易度が下がりそうですね。
高木: 「PCの調子が悪い」という訴えに対しても、WXPでは該当端末が普段と何が違うのかを分析できます。「メモリの負荷が今だけ高くなったのか」、あるいは「常時高い中で閾値を超えたのか」などが分かるので、「設定で回避する」「端末のスペックを上げる」といった解決策の議論に進めます。
星原: 導入企業が多いエンドポイント管理サービス「Microsoft Intune」(以下、Intune)とWXPは役割が重複しませんか。
高木: IntuneとWXPは、併用することで効果をさらに発揮します。Intuneは端末やソフトウェアの管理統制、WXPはリアルタイムの深い診断と分析に強みがあるので役割分担が可能です。
星原: 料金プランについてはいかがでしょうか。
高木: 「Standard」「Pro」「Elite」の3プランがあります。多くのお客さまには、可視化に必要な機能がそろったProをお薦めしています。最上位のEliteは、AIを用いた自然言語インタフェースや、アンケートから従業員のリアルな感情をスコアリングする「センチメント分析」機能を搭載しており、サイレントマジョリティーの声を拾うことが可能です。
星原: WXPの特徴的な活用例はありますか。
高木: ある大手メーカーのお客さまは、セキュアブート証明書の期限切れへの対処に頭を悩ませていました。複数メーカーの端末が混在しており、全容調査には人海戦術で多大な時間がかかる状況でした。そこでWXPで証明書の状態を検出するスクリプトで対象リストを作成して配信したところ、2日で完了しました。
Gartnerのレポートでリーダーの一社と評価
星原: HP Inc.はWXPにおいて2026年、調査会社Gartner®の「Magic Quadrant™ for Digital Employee Experience Management Tools」でリーダー・クアドラントに位置付けられています※1。なぜ専業ソフトウェアメーカーがひしめく中で、ハードウェアメーカーのHPのソフトウェアソリューションが評価されたのでしょうか。
高木: 私が考える最大の理由は、私たちが「PCとユーザーのことをよく知っているから」だと思います。OSやソフトウェアのレイヤーのみで稼働するツールとは違い、WXPはBIOSレベルを含む端末内部のデータを取得・分析できます。
星原: BIOSレベルでのアプローチは、まさにHPだからこそですね。そこまで深い領域が見えていると、セキュリティ面でも違いが出るのでしょうか。
高木: 「Copilot+ PC」をはじめHPのビジネスPCは、BIOSが攻撃されて書き換えられても自動復旧する機能を備えています。ただ、従業員さえも気付かないうちに復旧してしまうと、IT部門が障害・侵害を把握できないという盲点がありました。これに対し、WXPはWindowsに上がったBIOSのログを可視化できるため、複数端末で同様の問題が起きれば攻撃の痕跡を探るなどのアクションにつなげられます。
星原: ハードウェアの防御力とソフトウェアの可視化の能力が融合した、HPだからできる“合わせ技”ですね。
高木: その通りです。端末の入れ替え時期を提案する「スマートリフレッシュ」や電源オフの状態でも位置特定やワイプができるMDM(モバイルデバイス管理)機能の他、未知のマルウェアを隔離環境で実行して封じ込めるマイクロ仮想化技術とも連携可能です。
また、HPのビジネスPCと相性の良いWXPですが、WXPはマルチベンダー対応を徹底しています。OSレベルの管理やアプリケーションのクラッシュ分析など、どのメーカーのPCでも遜色なく管理・可視化できるので、安心して導入をご検討ください。
星原: WXPは管理対象がPCやスマートフォンにとどまらないと聞きました。
高木: WXPはPC管理にとどまらず、プリンタや会議室設備を含むデジタルワークプレイス全体を可視化します。10人用の会議室が1人だけで頻繁に占有されているなど会議室の利用実態を分析し、適切な会議室運用や設備投資の最適化を支援することで、従業員がより快適かつ効率的に働ける環境づくりに貢献します。
「コストセンター」から「戦略機能」へ DEXが変える未来
星原: ITツールの導入となると、どうしてもコストの議論になりがちです。「従業員の生産性向上と企業成長への投資」として経営層に認識してもらうには何が必要でしょうか。
高木: WXPの本質は、従業員の生産性とやりがいを高めることです。効果は「事業部門の売り上げ向上」「業務ダウンタイムの削減」などに表れるため、IT管理だけで判断すると価値を見誤ります。「“定期健診&予防医療”型のIT環境整備は、企業の成長を加速させる経営投資である」という意識で検討していただきたいですね。
星原: これまで「コスト」と一くくりにされていたものが、データの可視化によって生産性向上と結びつき、投資対象へと昇華するわけですね。
高木: その通りです。WXPでIT環境をリアルタイムに把握して先手を打てば、IT部門はトラブルの“消火係”から脱却できます。DEXや生産性を数値化して経営にインサイトを提示できると、IT部門は「コストセンター」から「投資リターンを最大化する戦略部門」へと進化するはずです。
星原: “定期健診&予防医療”の発想が、IT部門を経営の戦略組織へと変えていきますね。DEXを推進するWXPのポテンシャルの高さを改めて感じました。
※1 https://jp.ext.hp.com/info/newsroom/2026/20260618_2/
ガートナー、『Magic Quadrant™ for Digital Employee Experience Management Tools(デジタル従業員体験管理ツールに関するマジック・クアドラント)』、ダン・ウィルソン、スチュアート・ダウンズ、ロビン・ミルトン=ショネマン、2026年6月8日
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株式会社日本HP
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エグゼクティブ編集部/掲載内容有効期限:2026年9月6日