「絶望的人選」からのプロジェクト起死回生策:間違いだらけのIT経営(1/3 ページ)
プロジェクトを進めるとき、人材の選定は大きな意味を持つ。しかし、理想的な人材を常に集められるとは限らない。むしろ、理想的な人材配置など不可能というのが現実ではないか。
プロジェクトにエース級人材は期待できない
IT導入を成功させる条件の1つとして「プロジェクトチーム(PT)にエース級の人材を投入すべきだ」というのがある。確かにエース級の人材が投入された方が、プロジェクトが成功する確率は格段に高まる。しかし筆者は、エース級の人材を投入されたケースなど、ほとんど見たことがない。あっても、そのエースは従来から担当しているライン業務と兼務で、彼はライン業務に時間をとられてPTから徐々に足が遠のき、やがて「帰らぬ人」となる。
それならば、いっそのことエース級の人材を期待しない、むしろ、ダメ人材が投入されることを想定して、プロジェクトをいかに成功させるか、次善の策を考えておいた方が利口ではないのか。
まず、PTのメンバーはどんな役目を負うのか、そのためにはPTの目的がどこにあるかをはっきりしておく必要がある。話を進める上で、概略の定義をしておこう。
ベンダーからもメンバーが入り、役割も多岐にわたるPTもあるが、ここでの議論は単純化したい。ここでは、ユーザー企業内に設置されるPTとし、その目的はIT導入計画立案から要件定義の策定まで、そしてBPR(業務改革)をリードして完遂するまでとする。
PTメンバーは、情報システム部門、業務関連部門(例えばSCM導入の場合、営業・生産計画/管理・資材・倉庫・物流・経理など各関連部門)から選ばれ、後者は目的達成のために出身部門の意見をPTに反映し、PTの方針を出身部門に徹底しつつ、PTの業務をこなす。
ここでエース級の人材を選ぶという意味は、PT推進の中核となる情報システム部門からは担当分野の人材になるだろうから、業務関連部門からいかに優秀な人材を選ぶかということになる。これが、なかなかうまく事が運ばない。
PT発足が役員会議や部長会議で決定され、席上で優秀な人材を投入するべきだと合意するまではいいのだが、いざ人選に入ると合意は単なる建前となり、優秀な人材を供出したらライン業務がめちゃくちゃになるという本音が頭をもたげる。時には、絶望的人選が平気で行われる。
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