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「絶望的人選」からのプロジェクト起死回生策間違いだらけのIT経営(2/3 ページ)

プロジェクトを進めるとき、人材の選定は大きな意味を持つ。しかし、理想的な人材を常に集められるとは限らない。むしろ、理想的な人材配置など不可能というのが現実ではないか。

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理想的な人材配置より役割分担に腐心せよ

 今までに筆者が実務やコンサルティングで経験した、絶望的人選の例を示そう。

 A社のSFA導入PTに東京・大阪・九州など主要営業からメンバーが派遣されてきた。だが、我慢できるレベルは東京の者だけ、後はお粗末だった。例えば、大阪から派遣されたBはPCオタク。PCについては造詣が深いが、人とのコミュニケーションがまったくとれない人物だった。九州から派遣されたCは、ソフトウエア技術に詳しい技術者だが、人望がなく、職場で孤立していた男、という具合。

 D社の資材管理システム化PTに、実務に詳しいという前触れで資材部から派遣されたEは、55歳を過ぎた古手の元係長。係長を若手に譲って、いわば旗本退屈男を決め込んでいた人物。確かに実務には詳しいが、新しいことにはすべて拒絶反応を示した。

 F社の場合、生産管理システムPTに製造部のエースであるG部長代理が派遣されたが、兼務だった。午前中はライン業務に、午後はPT室にこもるという約束だったが、徐々にPT室へ入る時間が削られ、1カ月も経つと残業時間でさえたまにしか現れなくなった。

 ことほど左様に優秀な人材を望んでも無理なら、ダメ人材を前提に(実は、ダメと単純に言い切れないことが後で分かるが)PTを進めなければならないだろう。

 人間誰にも長所と短所がある。技術知識も豊富、ビジネスセンスも持ち合わせ、人間的魅力も備え、PTの仕事をバリバリこなす、などというスーパーマンは期待しても無理である。与えられた人材の長所を生かし、あるいは短所を逆手に取って利用するくらいの才覚を働かさなければならない。

 まず考えられることは、チームとして機能させることを画策する。例えば、上例のA社でのB、Cの場合だが、技術力も人間的魅力もない人材よりはよほどましだ。コンピュータ技術に優れているがコミュニケーション力に欠け、人との交流に難があるなら、コミュニケーション力のある別の人材を彼らと組ませて仕事をさせ、チームとしての総合力を出すのだ。

 しかし、人材の余裕などまったくなく、ギリギリで仕事をしている現場では、補完のための人材を投入するなど考えられないことだと言われそうだ。

 人材補完投入の可能性が少ないなら、次に考えられる方法は、与えられた人材の特長を生かすことだ。

 例えば、A社の場合、BとCは人柄から考えてPTの仕事は無理だと周囲から当てにされず、稼働したシステムは大阪・九州支店で軌道に乗らなかった。しかし、BはPC操作やPCネットワークのこととなると異常な力を発揮するし、Cはソフトウェアパッケージのこととなると目の色を変えるのだから、PTリーダーは彼らに得意分野を任せ、支店との折衝はリーダー自らが代わって務めるくらいのことをすべきだった。

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