「絶望的人選」からのプロジェクト起死回生策:間違いだらけのIT経営(3/3 ページ)
プロジェクトを進めるとき、人材の選定は大きな意味を持つ。しかし、理想的な人材を常に集められるとは限らない。むしろ、理想的な人材配置など不可能というのが現実ではないか。
人材のレベル見極めPT構成を考えよ
D社の場合は、Eをうまく使った。Eの短所はコンピュータ嫌いの上、新物拒否症で頑固なところだが、長所は現場に対して絶大に顔が利くことだった。PTリーダーは、そこをうまく利用した。
要件定義の際の現場の意見の聞き込みには、Eを立ち会わせた。Eのアンチシステムの思考回路は、現場の本音を聞きだすのに役に立った。EはPTから期待されていると感じるにつれて、最初の斜に構えていた姿勢に変化が見え、やる気が出てPTにコミットメントしてきた。BPR(Business Process Reengineering)の実施には、Eの本来の頑固さが幸いして、大いに力になった。
人間は長所を認められて、そこをますます発揮できるようになると、成長するものである。Eは新しいことに興味を持ち始め、頑固さがいい方向に発揮された。B、Cの場合は、結果的にPT内で疎んじられたが、長所を生かされていたらEのように成長していただろう。
さて上述したように、一見ダメ人材を利用する方法として、チームとして機能させる方法、あるいはダメと言われる人材の特長を生かす方法があるが、それでも効果がない場合は最後の方法として、構築するシステムをPTに与えられた人材のレベルに合わせることである。その場合は、トップを始めとする社内関係者にそのことを宣言しなければならない。
増岡直二郎(ますおか・なおじろう)
日立製作所、八木アンテナ、八木システムエンジニアリングを経て現在、「nao IT研究所」代表。その間経営、事業企画、製造、情報システム、営業統括、保守などの部門を経験し、IT導入にも直接かかわってきた。執筆・講演・大学非常勤講師・企業指導などで活躍中。著書に「IT導入は企業を危うくする」(洋泉社)、「迫りくる受難時代を勝ち抜くSEの条件」(洋泉社)。
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