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AXの難しさ――ERP未経験者に魅力をどう伝えるか柔軟性が売りのERP

ERP製品「Dynamics AX」はカスタマイズ性やパーソナライズ機能を兼ね備えている。課題はERPを導入したことのない企業がそれをどの程度メリットとして感じるかどうかだ。

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 マイクロソフトにとって悩ましいのは、ERPを理解していない人に「Dynamics AX」のメリットを説明しにくい点だろう。一般に企業がERP製品に期待したのは、業務プロセスの標準化、業務処理の統制化、トランザクションの管理、マスターデータの統合。合わせて画面や操作性の標準化、技術基盤の統一化にも期待したはずだ。

ERPを知らないと良さも分からない

 ERPを導入した結果、どうだったか。標準化や統一はできたものの使いづらい。データは正々と流れるようになったが、そこに自社の強みを盛り込むことができない。あるいは従来のカスタムシステムでできたことがERPではできない、といった不満が残った。

 AXはこうした不満を解消できるかもしれない。というのは、AXがERPとしての基本機能を備えるとともに、カスタマイズ性やパーソナライズ機能を持っているからだ。かつてカスタマイズや画面の作り込みに、企業は何億円もの追加投資をしなければならなかった。ただ、それらのメリットがERPを導入経験がない企業には響きにくい。

 ここで確認しておくと、まず、AXは会計管理を中心にERPに求められる基本機能(会計管理、サプライチェーン管理、在庫/倉庫管理、生産管理、CRM、人事管理、プロジェクト管理、そして分析機能)をひと通り備えており、企業は自社業務とのフィット&ギャップ分析から入れる製品である。

ナビゲーション画面(左)と、売掛金管理の販売注文画面(右)
ナビゲーション画面(左)と、売掛金管理の販売注文画面(右)

 次に画面だが、マイクロソフト製品に共通したアウトルック調で操作感は変わらない。さらに、ユーザーの業務に応じて機能とデータアクセス権限を提供するし、言語をユーザー単位で瞬時に切り替えられる。また、表示する項目やその配置順もユーザー単位でパーソナライズできるし、同じ画面から別の機能を表示することもできる。現場ごとに画面への要求は異なるし、ユーザーは使う項目だけを表示したがる。そうした細かいことにも簡単に対応できる。

従来のERPの欠点を修正

 さらに、少々技術的なことになるが、AXはオブジェクトの塊で管理されており、オブジェクトが部品化されることによって、最終的に画面や処理が組み立てられている。ベースとなるオブジェクトに変更をかけ、システムをリフレッシュすると、変更されたオブジェクトが使用されている箇所にすべて反映されるようになっている。例えば品目の桁数を増やすような場合、従来のERPであれば莫大な金がかかるが、それを簡単に変更できてしまう。また、マイクロソフトは標準機能(ソースコード)を公開した形で提供しており、かなり思い切ったカスタマイズも行える。

ピボットテーブルによる分析(左)とIEでレポートを表示(右)
ピボットテーブルによる分析(左)とIEでレポートを表示(右)

 なぜ変更できるのかというと、標準機能とカスタマイズされたオブジェクトとを階層を分けて管理しているから。AXでは、あらかじめ8つの階層構造を持ち、標準機能がそのうちの4階層を使用し、その上の4階層をアドオンやカスタマイズが使用する。階層を分けて管理する構造であるため、カスタマイズ部分を別のAXに持ち越すことが可能だ。バージョンアップの際に標準機能をバージョンアップしておいて、その上にカスタマイズの階層を戻すといったことができる。カスタマイズしているからアップグレードできない、と悩むこともなくなるだろう。

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