検索
連載

インターネットで加速するコンテンツ経済(後編)新世紀情報社会の春秋(1/2 ページ)

コンテンツビジネス全体がインターネットの進化とともに変化してきている。コンテンツの所有概念1つとってもその兆しははっきりと見える。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena

販売ビジネスモデルは今後はさらに多様化する!

 インターネットの普及が、広告をベースとしたビジネスモデルの進化を加速し、それによってコンテンツ業界のビジネスモデルは大きく変わりつつあるように思う。1つはコンテンツの流通と所有概念に関する変化だ。iPodが成功し始めた頃、アップルのスティーブ・ジョブズCEOは音楽配信において、定額制の様なモデルが成功しないことについて、次のようなことを言っていた。利用者は音楽を所有したいのであって、それがたとえ電子ファイルの様な目に見えない形であったとしても、自分の手元(すなわちiPodの中に)に持っておきたいのだ。

 少し前までは筆者もこの言葉に非常に共感していたのであるが、実際に配信サービスを利用し始めて感じるのは、所有の概念が今後さらに進化するということだ。具体的にはiTunesStoreや米国アマゾンのように、膨大なカタログを抱える配信サーバの存在を知ったなら、もはやファイルが手元にあるかどうかではなく、自分が購入した音楽データにいつでもアクセスできる権利があれば、それが音楽を所有しているという概念になるのではないだろうか。もちろんこれは音楽に限ったことではない。

 もう1つは、コンテンツへの対価すなわち販売ビジネスモデルの変化。これは、現在すでにそうなりつつある部分もあるが、圧縮形式のデータそのものをネットで配信販売することに対して、クオリティの高いデータをディスクに収録し、綺麗な装丁を施した「モノ」として販売することが、ある種のプレミアムとして認識される方向に進んでいる。配信が一般化することで、高級品としてのパッケージソフトの価格は、今後上昇に転ずるかもしれない。

 そしてこれをもう少し拡げて考えると、現在のデータ配信の下位に位置するものとして、無料のトライアルコンテンツ(例えば低品質のデータ)の存在が想定できる。これは広告経済的モデルを意識したものだが、従来シングル盤として位置づけられてきた概念が、それに代わってゆくかもしれない。

 さらにその対極に位置するものとして、さらなるプレミアム性としての体験型コンテンツ(つまり生演奏)の存在を想定することができる。もちろん、原価の意味合いが異なってくるので、単純に値段での比較はできないと思う。一昔前には、コンサートツアーは赤字でもアルバム販売で稼ぐことができるということが言われた時代もあった。ライブは幅広いファンに開かれたものでなければと、いくら人気のあるアーチストでもチケットを高額に設定することを避けているという時代もあった。気がつけばコンサートチケットの値段というのも随分と上昇しているようだ。

       | 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る