宋文洲氏が語る日中の違い「日本人は個人の自立が足りないよ」(2/2 ページ)
10%超の経済成長を5年連続で記録した中国――中国市場に繰り出す日本企業は多いが、ビジネスのやり方の違いに戸惑うといわれる。中国人経営者として初めて東証1部上場したソフトブレーンの宋文洲氏は、日中のビジネスマンに「大きな違いを感じない」という。
中国人の疑問「豊かな日本、これからどこへ行く」
「中国人からすると、日本はこれだけ豊かになって、何を求めて生きていくのかと思っている」という厳しい指摘も飛び出した。同氏が来日して20年ほどが過ぎたが「当時に比べて日本の若者は興味を失っている」と感じているという。
「日本の個人は目標を喪失し、国としてどこに行こうとしているのか」
「中国人はただ貧乏から抜け出したいと思っている。日本のものを輸入したいというのも、ハイクオリティーなものが欲しいだけで、それ以外は中国製品の方が安いから、それでいいと思っている」
「このままだと、日本はハイテクやハイクオリティーなものしか接点が持てなくなる。この差はいずれ埋まってくるのに。日本は先進国相手にしかビジネスできなくなっちゃうよ」
宋氏は、華僑のような個人のパワーを中国に学べるのではないか、と考えている。「日本人には、国家や企業に依存しない自立が必要。強い国というのは強い個人の数で決まるもの。もはや日本の中だけで商売をやっていくのは不可能なんだから、中国が好きでも嫌いでも飛び込んでいってほしい。ソニーのような企業の駐在員としてではなく、もっと個人として中国に来て、ビジネスを興す人がもっといてもいいと思う」
日本企業は時にはトップダウンを
アナリストの沈氏は、日中のビジネスの違いとして国民性と意思決定の違いを指摘した。
「中国は個人主義で能力主義。どちらかというとアメリカに近い。日本はチームワークを重視する。また、意思決定も違う。日本はボトムアップだが、中国はトップダウン。これもアメリカに近い」
ボトムアップには慎重さという良さがある一方で、意思決定までに時間が掛かる。どちらが良いというわけではないが、グローバルでやっていくにはトップダウンで迅速に動くことが必要な場合もあるという。
「中国に進出する日本企業は、まず課長さんが下見に来て、部長さんに報告する。そして部長さんが中国に来て、本部長が来る。社長さんが来るころには、別の外資の企業にすでに取られてしまっていたということがある」
「日本企業はもはや国内だけでは飯は食えない」
また、沈氏は「日中のビジネス関係は別居中の夫婦みたいなもの」と表現。相互依存が進み、離れようにも離れられない関係になっており、日本企業は中国やアジアの視点を持つことがますます大切だという。
「日本企業はもはや国内だけでは飯は食えない。海外市場の開拓が必要だ。特に中国は、2010年には日本の最大の貿易相手国になっている可能性がある。アジアと中国の視点が大切になってきている」
「少子高齢化によって人口が減ってくれば、人材不足を解消するために外国人を積極的に活用するべきだ。このエリアで日本は遅れている。OECD13カ国の中で後ろから2番目になってしまっている」
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