「日本はSAPに匹敵する製品をつくれる」「電子政府は出来が悪い」(1/3 ページ)
日本のIT分野における国際競争力の向上に向けた、パネルディスカッションが「ワセダCIOフォーラム」で行われた。「日本はSAPに匹敵する製品をつくれる」「電子政府は出来が悪い」――など、産官学からのパネリストが議論を戦わせた。
「SAPに匹敵する製品をつくれないことはない」――マイクロソフト樋口COO
「日本はIT分野に関しても数多くの特許を持っており、SAPに匹敵するような製品だってつくれないことはないと思う」――マイクロソフト代表執行役COOの樋口泰行氏は、日本のIT産業の技術力を高く評価している。
ユーザーとベンダー双方の経営者を経験してきた同氏は、世界に通用する日本のソフトウェア製品が登場しないのは日本企業の「戦略の欠如」が原因ではないか、と分析している。
「日本のソフトウェア会社は『一品物』のつくり込みに慣れてしまって、国際的に売り出すようなパッケージをつくるという考えがなかなか出てこない」
これにはユーザー企業サイドにも原因がある。
「米国などではITのインテリジェンスがユーザー側にあることが多いが、日本ではRFPに対してベンダーが全部やるのが一般的。その結果、ベンダーの思惑が強く出てしまい、しばしば戦略にリンクしないIT投資が行われる」
日本のソフトウェア業界のためにも、技術を理解し、明確なビジョンと戦略を持っているCIOの存在が必要だとの考えだ。経営不振に陥ったダイエーの再建を任された経験もある樋口氏だが、当時のIT環境はかなりひどいものだったようだ。それが、このような発言につながっている。
「POSレジもハンディターミナルも機材が古すぎた。特にハンディターミナルはサポートが切れており、バッテリも劣化していて30分ももたない。だから、従業員は頻繁にバックヤードに戻る。システムがネックになって、必要な戦略が打てない状態だった」
既にITは、オペレーションの効率化以上の戦略的な道具になっているものの、その発想が日本企業にはまだまだ希薄だ。そして、ここで引き離されたが最後、遅れを取り戻すには大変な努力が必要なことを痛感した。
「マラソンと同じ。止まったら大変なことになると実感した。ダイエーの社員は素晴らしく、現場は死にものぐるいで頑張っていた。それでもうまくいかない。構造的な問題が大きかったのだ」
樋口氏が日本企業の問題と感じるのは、総じて「戦略競争に弱い」という点だ。
「部分最適を積み重ねて全体最適を作り出すような、高度経済成長を前提とした判断がなされている。現在のようなビジネスモデルの転換が求められる時代には弱みになるという側面もある」
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