「不運」の連鎖は大相撲にも――懸賞本数の伸び悩みに見る消費者心理:景気探検(1/2 ページ)
景気の判断材料には明るい話題もあったが、11月は結果的に話の腰を折られることが多かった。大相撲でも人気力士の休場により多数の懸賞が消えた。
10月分の鉱工業生産指数・速報値は前月比1.6%増と2カ月ぶりの増加となった。10月分前月比は製造工業予測指数の3.8%に比べると低かったが、指数が112.1と8月の111.9を抜いて史上最高水準を更新したことからみても、しっかりした数字と言えよう
建築基準法改正の影響などで懸念されていた建設財の生産も前月比0.9%増と5カ月ぶりの増加に転じた。
鉱工業生産指数を製造工業予測指数前月比で11月分、12月分を延長した場合の試算では10〜12月期は前期比1.7%増、前期比年率7.1%増になる。過去1年間の実現率の平均0.9%減%と予測修正率の平均0.8%減を考慮すると10〜12月期は前期比0.8%増、前期比年率3.3%増になる。多少の下ぶれを考慮しても、7〜9月期に続き10〜12月期も前期比増加になる可能性が高いと思われる。
このように10月分鉱工業生産指数など景気に関する明るい話題はないわけではないが、サブプライムローン問題をはじめとする先行き不透明材料が多く、景況感はさえない状況が続いている。
年央以降、消費者心理が冷え込んできた。年金、住民税負担増、遅い梅雨明け、中越沖地震、ガソリンや生活必需品の上昇などを要因としたものだろう。しかし、消費総合指数などで消費の実体をみると6、7月分は弱かったが8月分以降それなりにしっかりしており、消費の実体と消費者心理は矛盾しているようだ。必要以上の心理面の悪化が、実体面の先行き悪化に結びつかないことを祈りたい。
人気力士休場の影響
こうした時、消費者心理を明るくしてくれる、景気と関連性のある身近なデータに期待したいところだが、せっかくの明るい話題も話の腰を折られることが11月は多かった。
例えば、大相撲の懸賞本数は企業の広告費の代理変数としてみているが、テレビ中継を主婦層が多く見ていることから、消費者心理に結びつくケースもある。06年名古屋場所の千秋楽結びの一番は、カメラマン殴打事件の影響で懸賞本数が減ったが、直後の土用丑の日のうなぎの蒲焼の購入金額落ち込みにつながってしまった。
07年の懸賞本数は5892本で史上最多となったものの、秋場所は前年比2.2%減、九州場所は同8.3%減と2場所連続のマイナスとなった。朝青龍問題や時津風部屋の事件などが、嫌気された面が大きい。それでも九州場所の初日は72本で前年比0%と前年並みのスタートであった。そのままいけば、秋場所のように前年比微減にとどまった。九州場所の8.3%減という前年比は半分以下の減少率でも良かったはずだ。
しかし、人気力士の高見盛が6日間休場したことで30本の永谷園の懸賞がなくなった。また、白鵬対琴光喜千秋楽結びの取り組みにはわずか28本しか掛からなかった。結び前の千代大海と魁皇の取組には地元九州出身力士ということで、それなりの懸賞が掛かれば視聴者心理に与える影響は軽微だったとみられるが、千代大海の休場でその効果は消えた。視聴者の心理に与えた影響が懸念されるところである。
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