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「あうん」の呼吸で乗り切る会社にM&A戦略は「禁じ手」?Top Interview(2/3 ページ)

景気に先行き不透明感はあるものの、グローバル経済をリードする、実力ある日本企業は、確実に利益が生み出せる事業構造への転換を成功させ、事業規模の拡大に乗り出している。ポイントは業務の標準化をITを使っていかに効率よく進めるか。日本のグローバル企業をよく知る日本オラクルの新宅正明社長が、M&Aによって成長できる企業とそうでない企業の違いについて語ってくれた。

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ビジネスプロセスを簡素化していく

ITmedia 新しい経営基盤を支えるITでは、ERPのようなパッケージアプリケーションがもっと活用されるべきと考えていますか?

新宅 ERPのようなパッケージアプリケーションは選択肢であって目的ではないはずです。経営としては、同じゴールに到達するのに、従来の仕事のやり方を踏襲したのであれば、100のビジネスプロセスが必要なところを、新しい経営のシステムによって、30でやってほしいわけです。できないはずはない、できている企業があれば、その例にならってやってほしいと考えます。

 100ものビジネスプロセスが必要だった背景には、社員の知恵があったり、顧客ごとの例外対応、商品ごとの例外対応があったりします。日本の企業は、そういう例外対応によって顧客サービスを高めたり、取引の優遇をしてきましたが、それはもはや改めなければなりません。例外があれば、リスクは抑え込めませんし、公正さも欠いてしまいます。担当者が代わると、「あの約束はどうなったの?」ということになり、例外対応を維持していくこともたいへんです。

新宅氏
「100のビジネスプロセスが必要なところを、新しい経営のシステムによって、30でやってほしい」

 膨れ上がった例外対応などでつくられた100のビジネスプロセスを、例えば、7割減らそうということです。簡素化されたビジネスプロセスに会社の魂を入れ、顧客サービスを向上するということを考えていくべきです。ビジネスプロセスを30に減らせば、精度やスピードは高まるし、コントロールもしやすくなります。ITシステムの構築もそれだけ手間が省け、メンテナンスの負荷も減らせます。

 たまたまビジネスプロセスの数の話をしましたが、本質的には、新しい経営のシステムをつくるときには、業務を改革し、会社としての基盤づくりをしていくことが重要だということです。

ITmedia かつてもBPR(Business Process Re-engineering)で業務のムリやムダを減らそうという取り組みがあったと思います。それとの違いはあるのでしょうか?

新宅 これまでにも調達の合理化、会計や人事のシステムの合理化はあったと思いますが、今取り組まれようとしている経営のシステムづくりでは、伝統的に例外対応も仕方ないと配慮されてきた営業プロセスも含め、フロントオフィス業務もバックオフィス業務もすべてを対象とし、簡素化していくことが求められています。

 そして新しい経営のシステムを支えるITのシステムも、新しい1つのアーキテクチャに収れんされる時代がやってきます。

ITmedia ばらばらのシステムが統合されるということですか。

新宅 1つのアーキテクチャに決めていかないと、コストを減らすことはできません。ITのインフラですから、究極はコストを削減していくことが重要です。CIOは、今年「10」のコストが掛かっている同じ仕事をするために、来年は「8」のコスト、再来年は「6」のコスト、と毎年減らしていくべきものです。

 しかし現実は、運用保守などの定常費用がかさみ、「10」「12」「14」と膨れ上がってしまいます。インフラや開発手法の標準化が求められ、SOA(Service-Oriented Architecture)やパッケージアプリケーションの活用も検討すべきでしょう。これまでのような自分勝手なやり方では駄目です。

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