【第1回】任務を終え、颯爽と去る:米平和部隊のITスペシャリストたち(1/2 ページ)
米平和部隊の幹部らに与えられたチャンスは、長くて5年。部隊で働ける在職期間が限られていることは、マネジメントの継承を芸術的なものに変えることになる。
エド・アンダーソン氏のオフィスは「短期決戦」を叫ぶ。
白い壁はむき出しのまま。秘書からもらったというレソト王国の巨大なポスターと、アンダーソン氏の娘が描いた蝶のクレヨン画だけが飾られていた。部屋の中を観察できたのはそこまで。米平和部隊のCIOであるアンダーソン氏は、2年以内にその職を離れることがほぼ決まっている。
アンダーソン氏の76名の部下も、ほとんどは早晩退職する予定だ。部隊のイントラネットをアップグレードしたネットワークの専門家は、この春に退職する。アプリケーションシステム開発のスペシャリストの1人も、年内に退職する。副CIOらの残された時間も限られている。オペレーション担当の責任者は来年秋に雇用契約が切れる。その後は30カ月の再契約となる。
アプリケーションシステム・ディレクターの契約期間は2009年の春までだ。
もちろん、ITの世界に離職はつきもの。米労働省労働統計局によると、2000〜2005年の間、IT産業は毎年全体の3分の1から4分の2の労働者を新規に雇用している。
しかし平和部隊の場合、職員の離職は一般の場合と少し事情が異なる。アンダーソン氏は、部下が全員いずれかの時期に部隊を離れると知ったとき、悪態と祈りの言葉を口にした。しかし、それは法律で決まっていた。1965年に成立した「平和部隊法」では、部隊のすべての職員(アンダーソン氏も含まれる)は5年で退職しなければならないと定められている。
そのため多くの職員は3〜4年で退職し、国務省の国際開発庁(USAID)やさまざまな非営利団体といったほかの国際的支援組織に再就職することが多い。
任務は5年
そうしたことはすべて、アンダーソン氏が机の上に広げた不吉なチャートに書き込まれていた。左端にIT部門のスタッフ一人ひとりの名前、その右側に色の付いた線で各スタッフの部隊在籍期間を示しているチャートだ。30カ月の雇用契約期間は“ツアー”と呼ばれ、ファーストツアーか、セカンドツアーか、法律で定められたリミットまであとどれくらいあるかが一目で分かるようになっている。
平和部隊の中では、この法律は「5年ルール」として知られている。部隊に常にフレッシュな人材とアイデアを供給する仕組みで、それは「機能している」(アンダーソン氏)という。実際、スタッフの大部分はIT分野で働いた経験のある元ボランティアである(ボランティアの期間は5年ルールにカウントされない)。
米平和部隊の幹部らに与えられたチャンスは、長くて5年。部隊で働ける在職期間が限られていることは、マネジメントの継承を芸術的なものに変えることになった――。
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