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【第5回】世にもおかしな日本のIT組織(5)〜社長が海外出張、決裁書止まります三方一両得のIT論 IT部門がもう一度「力」をつける時(1/2 ページ)

どうして決裁書、報告書は紙のままで回付され続けるのか。承認されるまで通常で2週間、長いものでは2カ月も掛かる。ビジネススピードが勝敗を分ける時代に、本当に「紙と判子」で世界と戦えというのか。

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判子好きな日本人

 日本は「判子」「印鑑」の国である。確認、承認、合意、契約などの意思表示は押印によって行われ、それがないと契約が成立しない。なぜサインじゃダメなんだろうか、といつも疑問に思うが、これが標準的な日本の商習慣なのだ。

 だから、私たちが会社に入ると、すぐに「印鑑」が必要になる。届出や申請書に判子を押して提出しなければならないからだ。この判子文化とも呼べる習慣は日本人の仕事スタイルに大きな影響を与えている。電子化が進んだ現在も書類が主要な意思伝達や意思決定の媒体として使われ、その結果、企業の中で多くの紙が行き交う。

 例えば、通勤手当の申請をすると次のように判子を求めて書類が流れる。

申請書に必要事項を記入する(判子)→係長に提出(判子)→課長が確認(判子)→部長が確認(判子)→担当に返却→人事に提出→人事担当が確認(判子)→人事係長が確認(判子)→人事課長が確認(判子)→人事部長が承認(判子)

 決裁申請するとなるともっと複雑で、回付経路はさらに長くなる。

決裁書を起案する(判子)→係長に提出(判子)→課長が確認(判子)→部長が確認(判子)→予算管理担当が確認(判子)→企画部長が確認(判子)→事業部長が確認(判子)→経理部担当が確認(判子)→経理課長が確認(判子)→経理部長が承認(判子)→購買部担当が確認(判子)→購買課長が確認(判子)→購買部長が確認(判子)→本部長室長が確認(判子)→本部長が決裁(判子)→返却

 これはあくまでも基本経路にすぎない。決裁案件ごとに横道にそれて、関係役員にも確認回付されることも多い。日本人はたくさんの判子が並んでいる決裁書をみると、重要案件に見えてくるのだろうか。それとも「これだけ判子を押してもらっているのだから、この案件は大丈夫」と安心したいのだろうか。

 やはり、この長い長い回付は本当に必要なのだろうか、と疑問でならない。恐らくは、その企業の風土としては必要で重要なことなのだろう。しかし、これでは時間と手間が掛かりすぎる。スピードが勝敗を分けるこのご時勢に、通常で2週間、長く掛かるものでは2カ月というのはどうみても意思決定を遅らせているだけとしか思えない。

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