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【第4回】知識の継承――誰もがいずれは去る米平和部隊のITスペシャリストたち(1/2 ページ)

平和部隊は独立系の政府機関ではあるが、雇用や解雇などを含め、連邦政府のルールや規制に従わなければならない。米平和部隊の幹部らに与えられたチャンスは、長くて5年。新人の即戦力化が必要だ。

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 米平和部隊のCIOエド・アンダーソン氏の片腕、ラム・マーフィー氏は、問題の解決に向けて多くの時間を割いている。アプリケーションシステム担当ディレクターとして17名のスタッフを指揮する同氏は2006年、そのほとんどの上級スタッフがそれぞれのツアー終了とともに離職するという事態を経験した。

 この大量離職は、マーフィー氏に人事の計画性がいかに重要であるかを再認識させた。空席となったポジションを埋めた後、マーフィー氏はスタッフを再編して、離職に対応できる体制を整えた。「特にセカンドツアーの終了が見えてきた人々には、直接的なタスクのプロデューサーから、指導者的な役割に比重を移すよう指示している」と同氏は説明する。

 5年ルールの適用が免除されたアプリケーションシステム開発の専門家、ダンカン・ヘイズ氏のような指導者は、現行のプロジェクトから手を引く必要はなく、新しいプロジェクトにも直接関与しない。マーフィー氏の狙いは、彼らが離職する前に「自分たちの知識を広く伝える」コーチ役として時間を多く割けるようにすることだ。

 現在、新規雇用のスタッフが戦力になるまで3〜4カ月掛かっている。というのも、「ドキュメンテーションの慣行が未成熟であるため」(マーフィー氏)だ。来年はこの点を改善し、より効率的な情報アクセスツールをインストールして、あらゆる情報をソースコードのように扱えるようにする計画だ。

「それによって新人の即戦力化を図る」と、マーフィー氏は語る。

 同時に、変更管理、ソフトウェアリリース、品質管理など、あらゆるプロシージャの開発、ドキュメント化も進めている。「ブートキャンプに組み込めば、新兵をひと月で戦力化できるだろう」と、マーフィー氏は言う。

 マーフィー氏にとって、5年ルールはスタッフ開発の課題そのものだ。高度化する部隊のニーズに対応できるように、また雇用契約期間が終了する前に離職するスタッフを引き留めるために、スタッフのトレーニングを積極的に行っている。それはスタッフのためでもある。「平和部隊を離れる時、それぞれのスキルが市場のニーズに合うようにしておきたい」というのがマーフィー氏の狙いだ。

 平和部隊がITスタッフの鍛錬の場として高い評価を受けるようになれば、スタッフのリクルートにも有利に働くだろう(もちろん、5年ルールが障害になる場合もある。マーフィー氏は、2人の応募者が5年ルールの説明を受けた後、感謝の言葉を述べて面接室を出ていったことを覚えている)。

 事実、部隊には、誰もが未来の希望に向けて「卒業」していく大学のようなオーラがある。「ここではすべてがオープンだ。誰もがいずれは去っていく」。

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