2度の震災が突き付けたサプライチェーンへのリスク(後編):トレンドフォーカス(1/2 ページ)
政府や自治体、企業などで事業継続への関心が高まるっている。BCM(事業継続管理)やBCP(事業継続計画)を本格的に導入する動きが活発化している。
前編はこちら→ 想定外の危機で企業の明暗を分けるもの(前編)
日本における事業継続の現状はどうだろうか。
05年に経済産業省が発表したBCP策定状況に関するアンケートでは、日本企業の認識の低さが浮き彫りとなった。海外企業では9.11のテロ以降、海外の金融当局が各金融機関に対して事業継続への要請を強めたことにより、企業全体でのBCP策定率は47%、売上高20億円以上の企業では69%となっているが、日本の上場企業全体で9.8%、売上高20億円以上でも9.7%と低調だ。
だが、海外企業が取引先である日本企業へのBCP導入を促したことと、2度の震災が経済にもたらした被害がそれを促進しつつある。
新潟県中越地震による、旧新潟三洋電子の家電用LSIや日本精機の車載用計器類の供給停止、新潟県中越沖地震での、東京電力柏崎刈羽原子力発電所火災の送電停止による首都圏の電力逼迫や、リケン柏崎工場被災によるエンジン部品の供給停止は、サプライチェーンへ具体的なリスクを産業界に突き付けた。
それにより、提携企業にBCPの策定を義務付けたり、新規取引契約条件に含めたりするケースが増えているという。
野村総合研究所(NRI)では、国内東証一部・二部上場企業全社および非上場企業、外資系金融企業の売り上げ上位から抽出した企業3000社を対象とした、BCPに関するアンケート調査の結果を発表した。
有効回答数169社の中、BCPを策定済みとする企業は29%、策定中/策定予定が68.6%で、合計すると100%近くが関心を持っていることが判明。ただし、BCP策定予定企業の中で1年以内に着手するとした企業は21.8%で、8割近くは策定時期が未定で、急速なBCPの進展は見込まれないことが分かった。
課題としては、「着手する余裕がない」(60%)、「人材不足」(47.3%)、「策定方法が分からない」(34.5%)がトップ3で、「予算がない」(23.6%)、「経営層の理解が得られない」(20%)と続く。
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