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トップを不安にするITに関する「イヤな話」間違いだらけのIT経営(1/2 ページ)

情報化投資に関するマイナス情報といかに立ち向かうか、冷静に判断するか、トップにはそんな資質も必要だ。

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情報化投資はムダだった?

 情報化投資において「効果を認めない」企業は、10社のうち約3社ある。「効果が低い」も含めると5社に迫る。トップがIT導入を逡巡するのも、むべなるかな、である。

 総務省の調査(「平成18年度通信利用動向調査の結果」、調査対象:常用雇用者規模100名以上の企業1836社)によれば、「情報化投資における効果の程度」としていくつかの質問を設定しており、「情報化投資の効果なし」とする回答の比率は、質問のテーマによって異なる比率が出ているが、最小で21%強、最大で35%強になる。これには、「効果がマイナス」という回答も含む。一方、効果を認めている企業には、効果が「高い」、「中程度」、「低い」が含まれており、「効果なし」と「効果が低い」を合わせると約50%にもなる。

 トップがいろいろな機会に、多くの人から「ITを導入したが、効果がない」とか、ましてや「むしろマイナスだよ」とか、あるいは「効果は出たものの、投資に合わないね」などと聞かされると、トップがIT導入に迷いが出ても仕方があるまい。 

 トップがIT導入に迷うと言っても、小・零細企業ならいざ知らず、中規模企業以上なら今や会計・給与などの基本業務については当然IT化しているだろうから、情報共有、部門間連携、全体最適など、変化の激しい経営環境に対応するための経営革新や、あるいは日本版SOX法などへの対応(日本版SOX法対応と言っても単なる法令対応でなく、企業価値の向上や創造という点で経営革新)というテーマに対するIT化を進めているはずである。

IT投資効果に疑問、は当たり前

 自らマイナス情報を仕入れてきては、投資効果を疑ってばかりいても何も進まない。いまだにメインコンピュータを後生大事に抱え込んで、データのバッチ処理をしている中規模企業A社がある。A社のシステム部門関係者は、社内にパソコンオンラインネットワークシステムを敷設したいと考え、数年前から何度も計画を立案しているが、トップBは頑として認めない。認めない理由は、そもそも効果が期待できない上に、パソコンを導入するとインターネットに接続する、そうすると情報が漏洩したり、ウイルスに侵入されたりする。それに、パソコン利用の公私の区別ができない。「現にあそこの会社は、効果が出ない、無駄な投資だったと言っている」、「こっちの会社では、従業員が勤務時間中にパソコンでゲームをしていると言う」、「どこそこの会社は、セキュリティなどで次々金がかかると言っている」と、Bは負の情報を仕入れてきて、ITに対する不信感を募らせている。

 A社には正式のCIO職はないが、筆者の知り合いのC役員がシステム部門を管掌している関係で、Cから筆者に「Bに会って洗脳を試みてくれないか」という依頼があった。筆者はBに会って話し合ってみる気持ちは持ったが、Bは「ITのコンサルタントに会う気は毛頭ない」と、Cの仕掛けを全く受け入れなかった。

 一方、零細企業D社のトップの例である。D社は建材販売と簡単な工事を、10名の社員で営んでいる。ある時、E取締役管理部長は人手不足を補うため、会計システムと販売管理システムを導入しようとした。Eは管理部長と言っても、零細企業なのであらゆる業務について隠然たる実権を握っていた。Eから相談を受けたF社長は、ITに日頃強い疑問を持っていたが、Eに反対する雰囲気ではなかった。Eは、ベンダーとどんどん話を進めた。Fは後れを取るまいと、同業他社のIT導入例や、ベンダーに紹介を依頼した同規模企業の導入例を貪欲に調べた。やがて、FはITに対して理解を深め、一家言持つようにさえなった。自然な形で客観的判断力を持てるようになったわけだ

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