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コンテンツを世界に売れる“目利き”がいない?――進出を阻む深刻な人材難岐路に立つ日本のコンテンツ産業(後編)(1/3 ページ)

日本のコンテンツ産業は、果たしてグローバル化を推進できるのか。その壁といえるのが“人材”にほかならない。では、壁を乗り越えるための方策とは? 経済産業省の井上悟志氏に話を聞いた。

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ワンソース・マルチユースの切り札となるマルチコンテンツ力

――グローバル化を進める上での日本ならではの強みとは?

井上 まず挙げることができるのがマルチコンテンツ力です。日本のコンテンツ産業はアニメ、ゲーム、マンガといった個々のコンテンツの品質が総じて高い水準にあります。これは、世界的にもあまり類がありません。デジタル化によりコンテンツの融合が進んだ場合には、総合的な品質の高さから他国よりも高い相乗効果をもたらすはずです。

 例えばバンダイでは過去、「パワーレンジャー」シリーズにおいて、新たに俳優を変えて撮影するなど、各国の嗜好に合わせて作品に少しずつ手を加えることで、米国やインドなど、過去の作品群を基に何層にもわたって利益を回収する仕組みを構築することに成功しています。

 こうした作品をさまざまなかたちで使いまわす手法は「ワンソース・マルチユース」と呼ばれますが、この手法を採用してコンテンツを融合させることで新たな作品を作る場合、双方の品質が高ければ、新作品の価値も高くなるはずです。

 また、日本はコンテンツの製作技術のみならず、コンテンツの出口となる端末や映像技術などに関するポテンシャルも決して低くありません。ブロードバンド環境や高機能なモバイル端末の利用も、すでに広く普及しています。

 さらに、豊富な資金力も見逃すことができません。日本には金融機関や一般投資家を含めて、潜在的な投資資金があり、需要に応えることができる資金があるのです。実際に、ここ数年で資金の投資先にアニメをはじめとしたコンテンツを選定する企業が着々と増えつつあります。

 経済産業省の新経済成長戦略では、2015年までにコンテンツ産業の売上を18.7兆円にまで引き上げるとの目標を掲げています。2005年の国内外での売上が約14兆円であることを考えれば、あと5兆円ほど上積みしなくてはならないわけです。

 ただし、世界のコンテンツ市場は、2015年までに60兆円ほど伸びると予測されています。その12分の1を獲得できれば目標を達成できる。ただし、何も手を打たなければ、そのほとんどを諸外国に奪われてしまうでしょう。できる限り早く海外市場の開拓に本腰を入れなくてはならないのです。


経済産業省商務情報政策局
文化情報関連産業課
課長補佐 井上悟志氏
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