「相手の弱点を突いて負かす筋書き」描けない日本の経営者(2/2 ページ)
ガートナー ジャパンのエグゼクティブ パートナー、小西一有氏は日本の経営者やCIOの意識の遅れに苦言を呈する。
「可視化しない限り、どこかで不具合が発生しても原因が分からない。例えば、調達部門の効率化を実施しても、ほかの部門を把握できなければ意味がない。調達部の改善策が、設計部門やロジスティクスに致命的な悪影響を及ぼすかもしれないからだ。特に日本の企業でこうした事態は多発している」(小西氏)
可視化の具体策としては、ビジネスインテリジェンスなどのソフトウェア導入などが候補に挙がってくる。だが小西氏は「IT部門はまずはコンピュータを捨てて、組織に横串を入れる」ことを奨励する。まずは企業内の組織間を一体として理解することがIT化の大前提というわけだ。
「日本のCIOは2008年になり気づき始めている印象がある。むしろ経営者の意識の遅れが心配だ」(同氏)
日本の多くのCIOと接点を持つ小西氏は「CIOはそれほど遅れていない」と話す。だが、懸念がないわけではないという。
Gartnerは世界33カ国、1500人以上のCIOを対象に2007年10〜12月にアンケートを実施した。そこで、日本と世界の各CIOに「気になること」を聞いたという。
グローバルのCIOの回答で上位だったのは「物価高の問題」「政府の動き」「経済成長率の停滞」などだった。一方で、日本のCIOが挙げたのは「国際競争の激化」だった。
これについて小西氏は「日本のCIOは競争することを拒否しているとも取れる結果だ。相手の弱いところを突き、相手を負かすための筋書きを欧米企業は当然のものとして描く。それが戦略だ。一生懸命働くことはもはや美徳にならない。戦略なき企業は“肉食獣”の欧米企業に飲み込まれるだろう」と語気を強めた。
松下幸之助氏の言葉「企業は人なり」は今も重いが、「企業は戦略なり」との考え方も取り入れていかなければ、日本企業は国際競争を生き抜くに当たって苦労することになりそうだ。
なお今後、小西氏の提言を寄稿の形でリサーチチャンネルやエグゼクティブにて掲載していきます。また同氏はガートナーのEXP(エグゼクティブ プログラム)の国内事業責任者を務めています。
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