「IT経営協議会」発足、憂国の経営者がITを生かした経営を討議(1/2 ページ)
IT活用によるニッポン企業の競争力向上は、個々の企業のみならず、国家レベルで取り組むべき課題だ。経営者をはじめ産官学の有識者からなる「IT経営協議会」は、経営とITの融合や、それを支える高度IT人材、さらには企業の枠を超えた共通基盤の整備などについて議論し、実現を目指す。
経済産業省は6月20日、ITによる日本の産業競争力の強化を目的に、協議会会員企業27社と大学教授など専門家が参加する「IT経営協議会」をスタートさせた。都内で行われた第1回の会合では、IT経営の実践に向け経営者の視点から取り組むべき事項のエッセンスをまとめた「IT経営憲章」を採択したほか、企業向けガイドライン「IT経営ロードマップ」と、これに基づいたIT投資効果の指標を策定した。
会員企業は以下の通り。アサヒビール、イオン、荏原エージェンシー、カシオ計算機、カブドットコム証券、カルビー、関西電力、コクヨ、JFEスチール、ジェイティビー、情報システム総研、セブン&アイ・ホールディングス、ソニー生命保険、大成建設、東京海上日動火災保険、東洋インキ製造、トヨタ自動車、日興シティグループ証券、日産自動車、日本放送協会、ネットイヤーグループ、東日本旅客鉄道、ファーストリテイリング、松下電器産業、リコー、りそなホールディングス、ローソン。
国内の大手ユーザー企業や官学の有識者などが参加する「IT経営協議会」が発足。第1回会合には甘利明経済産業相(中央)も出席し、「政府としてもIT活用および業務改革の重要性を痛感している。IT経営憲章によって、企業や業界の枠を超えた取り組みが広がることを期待する」と話した
IT経営協議会は、ITを活用した企業経営について経営者同士が議論する会合。2007年6月に開かれた「IT化の進展と我が国産業の競争力強化に関する研究会」(経産省)の中で、ITによる生産性向上に向けて経営者レベルの業種横断的な検討および合意形成の場の設置を求められたことが発端だ。同年11月には、会員企業CIO(最高情報責任者)約30名と専門家による「CIO戦略フォーラム」を立ち上げ、各社の事例研究を基礎に今後のIT経営にかかわる施策の方向性などを計11回の会合で討議してきた。
国際競争に打ち勝つための10原則
こうした討議の中で策定されたIT経営憲章は、ITを駆使した企業経営を実践し国際競争力を高めるための10原則を提示する(下図参照)。
【IT経営憲章】 ITを我が国の競争力の糧とするための10原則
1. 【経営とITの融合】経営者は、自らの経営判断に基づき、企業改革や業務改革の道具として常にITを戦略的に活用する可能性を探求する。
2. 【改革のリード】経営者は、企業改革にITにおける技術革新の成果を生かし、日々の細かな改善を含め、中長期にわたり、取組みをリードする。
3. 【優先順位の明確化】経営者は、取り組むべき企業改革や業務改革の内容を明らかにして、その実現に向けたIT投資の優先順位を常に明確に現場に示す。
4. 【見える化】経営者は、ITを活用し、競争優位の獲得に必要な情報や業務を可視化し、かつステークホルダーへの情報開示や透明性の確保に取り組む。
5. 【共有化】経営者は、「見える化」した情報や業務を「共有化」し、企業内での部門を超えた業務間連携、業種・業態・規模を超えた企業間連携を促す情報基盤構築やバリューチェーンの最適化に取り組む。
6. 【柔軟化】経営者は、ITを活用し、個々の企業の枠にとらわれず、業務やシステムの組み替えや、必要な情報を迅速かつ最適に活用できる事業構造への転換に取り組み、経営環境の急速な変化に柔軟に対応する。
7. 【CIOと高度人材の育成】経営者は、最適なIT投資・IT活用を実現するために、CIOを任命し、ともに企業改革や業務改革に取り組む。また、産学官、ユーザー・ベンダの垣根を越えて、ITを駆使した企業改革を推進できる高度人材の育成・交流を推進する。
8. 【リスク管理】経営者は、IT活用がもたらすリスクと、問題が発生した際のステークホルダーや社会に及ぼす影響を正しく認識し、その管理を徹底する。
9. 【環境への配慮】経営者は、環境に対する企業責任を認識し、IT活用によるエネルギー効率向上や省資源化に取り組む。
10. 【国内企業全体の底上げ】経営者は、IT投資から最大限の効果を引き出すためにも、中小企業等企業規模や業種の如何を問わず、企業の枠を超えて我が国企業全体のIT経営の改善・普及に取り組む。
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