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【第13回】疲弊するIT部門(6)〜人が育たない人材育成、問われる人間力三方一両得のIT論 IT部門がもう一度「力」をつける時(1/3 ページ)

システムづくりはSIer頼み。自力でシステムを立て直すことができなくなってきたIT部門は、慢性的な人材不足を抱えながら次の世代をどう育てればよいのか。システムと業務のギャップを埋めていくためにも、相互の意見交換による問題解決力や分かりやすい伝え方を創意工夫できる感性がどうしても欠かせない。

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停止状態に陥ったIT部門の人材育成

 1990年代前半にバブルがはじけて以降、ITコスト削減のために人員削減、ダウンサイジング、ERPシステムの導入、ホスト撤廃と進めてきたが、どれも道半ばという状態で現在に至り、サーバの乱立、撤廃できないホスト、統合できないERPシステム、IT人材不足という課題を抱えて出口が見えない状態に陥っている。

 IT部門に新入社員が配属されなくなって十数年、バブル最盛期の入社組が、いまだに若手と言われている。IT人材不足のため、システムの企画提案から開発、保守までもSIer頼みになるようになり10年以上になる。

 この間、IT部門の人材育成は停止してしまっている。変化のスピードは上がり、今のIT部門では、自力でITシステムを立て直す力はなくなりつつある。

こういう背景の中、疲弊するIT部門の復活には人材育成が急務である。

 わたしは製造業に勤務していた中で、10年近くIT部門で新人教育を担当していた。本格的なIT教育をする前も毎年プログラミングの標準化教育を担当していた。上司がわたしに先生を任せた理由は、ITの素人に手をかえ品をかえ、分かりやすく説明する能力が買われたからだ。

 わたしは、ITの専門分野において特に深い知識も他人に自慢できるスキルもないが、難しいことを分かりやすく例えるのがうまいという特技がある。恐らくこれが、教育や課題解決に必要な能力なのではないだろうか。

バブル期の新人教育で学んだこと

 わたしが新人教育をしていた1985年〜95年までの10年の中で記憶に深く刻まれているのが、1990〜92年のバブル期大量採用の3カ年だった。

 毎年40人を超える新人を教えるというのは本当に大変なことだった。教育に関しては素人だったので、まず目標をどこに置くのか、そしてどのようなカリキュラムを組めばいいのか、実に苦労した。加えて、わたし自身もまったくの素人でIT部門に配属されたため、プログラム言語の研修から始まり、2、3年かけて、ようやくホストコンピュータのバッチシステムの開発ができるようになったという経験がある。

 ただし、決して自分たちの受けた教育が良かったとは思っていない。なぜかというと、システムとは何か、システム開発はどうあるべきかなどIT部門としての生産性や品質管理のIT統制という面と、エンドユーザーに対するサービスという視点でどうあるべきかというそもそもの考え方を、誰も教えてくれなかったからである。

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