【第13回】疲弊するIT部門(6)〜人が育たない人材育成、問われる人間力:三方一両得のIT論 IT部門がもう一度「力」をつける時(2/3 ページ)
システムづくりはSIer頼み。自力でシステムを立て直すことができなくなってきたIT部門は、慢性的な人材不足を抱えながら次の世代をどう育てればよいのか。システムと業務のギャップを埋めていくためにも、相互の意見交換による問題解決力や分かりやすい伝え方を創意工夫できる感性がどうしても欠かせない。
必要なのは人間教育
企業の中で「IT部門はサービス部門である」というのがわたしの考えである。良いシステムとは何か? それは、最新のハードウェアやパッケージソフトを駆使してレベルの高い技術で構築したものではなく、単純に仕事の役に立つシステムだと言える。この単純な考え方を新人に感じてもらうことは難しいかもしれないが、研修を終えて現場で開発に携わる中で、自分たちの役割はこうなんだということを認識できる、そうした基本を体験させてあげるようなカリキュラムを考案していた。
一般的な新人教育といえば、コンピュータ入門、プログラミング研修、DB管理、JCL(ジョブ制御言語)、JOBフロー、OS(MVS、UNIX、Windows、Linuxなど)、パソコンの操作などである。しかし、これはあくまでIT専門研修であって、システム開発に必要な現場の社員からヒアリングするためのコミュニケーション能力や、業務の流れを分析して改善を図るための概念形成力、洞察力、企画力などはまったく入っていない。
では、これはどこで習得するのかというと、OJT(On-the-Job Training)である。最低限のIT知識だけを集合研修で学習し、その知識の生かし方は現場に配属後、先輩に実務の中で教わるというのが通常の方法である。しかし、それでは育つか育たないかは先輩次第になってしまう。はっきり言って、若手を育てるのが上手な先輩社員は非常に少ない。IT部門の先輩はコミュニケーションが苦手な社員が多い。結局、新人が育つか育たないかは、本人次第というのが現実ある。
そこで、わたしが新人研修の中に多く盛り込んだのが、課題解決のワークショップやその研究結果をみんなの前で発表するプレゼンテーションであった。価値観の違うメンバー同士で意見をぶつけ合い、課題の原因究明や解決策を見出すには、お互いの考えや意見を認めた上で、本質を見つける執念がないとできない。また、それを発表して分かってもらうには、内容をいかにわかり易く適切に説明するかという創意工夫が必要になる。IT専門教育とはあまり関係ないように見えるが、5年、10年経つとこれが実って、花咲く人が出てくるはずである。育つのは本人次第といいながらも、そのDNAが芽を出すことで将来の中核社員を育てるのがわたしなりの育成戦略であった。
これ以外にも、朝礼での所感をわたしが審査し、できが悪い場合は翌日も朝礼当番というルールを作った。ただし、これは新人には大変不評だった。結局、わたしが面白くないと思うとNGを出してしまうので、「岡さん好みの話」をするのは難しいということになってしまった。
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