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【第13回】疲弊するIT部門(6)〜人が育たない人材育成、問われる人間力三方一両得のIT論 IT部門がもう一度「力」をつける時(3/3 ページ)

システムづくりはSIer頼み。自力でシステムを立て直すことができなくなってきたIT部門は、慢性的な人材不足を抱えながら次の世代をどう育てればよいのか。システムと業務のギャップを埋めていくためにも、相互の意見交換による問題解決力や分かりやすい伝え方を創意工夫できる感性がどうしても欠かせない。

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優秀で冷たいコンピュータ

 さらに、わたしが重点を置いたのが、コンピュータは正直で、融通が利かない機械だということをしっかり認識させることだった。初めてプログラミングに取り組むと、必ず一度はコンピュータは本当に正しく動くのかと疑いたくなる。自分の作ったプログラムは正しいのに、思い通りの処理結果が出てこない。学校の勉強ができた人ほどコンピュータを疑う。

 わたし自身も、新人時代に自分のプログラム開発をしていて、どうしてもプログラムバグが分からない時に、プログラムを直さずにコンパイルを繰り返した経験がある。でも、結局コンピュータは正しく、自分のプログラムが間違っているということを何度も思い知らされた。やはりコンピュータは正しく、正しい結果が出ないのはプログラムが間違っているからだということを心底思えるようになるには時間がかかった。

 大手製造業に入社してくる新人は優秀だ。プライドは高く、なかなか自分のミスを認めることができない人が大半だろう。

 コンピュータは「0ゼロ」と「Oオー」を間違えたり、文字列と数値の定義を間違えたりしても、意図した通りの結果を自分に返してはくれない。人間なら見れば分かる間違いを、コンピュータは冷たく定義通りに処理するのだ。コンピュータとは優秀だが冷たいということを肝に銘じることが、ITと付き合っていく上で越えなければならない最初の壁である。

 一人前のSEになって開発、維持メンテナンスをやるときに一番大切なことは、事実を正面から受け止めることだ。トラブルが起こったときも、まず事実を認めること、そして誰が悪いかではなく、その影響の大きさ、対策の緊急性、考えられる仮対策、真因を調べる手段、本体策と再発防止策と手際よく片付けることができなければ、この業界では役に立たない。

 蛇足だが、システムトラブルの原因がなかなか分からないときは、非常に単純な原因であることが多いというのがわたしの持論である。頭の中でいくら考えていても自分のロジックの繰り返しで、見落としている部分は絶対に出てこない。基本は、事実を1つ1つ並べて書き出していくこと。そうすれば、必ず見落としているところが見つかる。勝手な思い込みと言うのが、システムトラブルの復旧を遅らせることが多いものだ。

プロフィール

岡政次(おか まさじ)

ウイングアーク テクノロジーズ株式会社 協創企画推進室

三重県出身1959年生まれ。1977年シャープ株式会社に入社。本社IT部門に在籍、10年強の新人教育、標準化・共通システム化を担当。さらにシステム企画担当として、ホスト撤廃プロジェクト、マスター統合、帳票出力基盤の構築等に携わる。2007年4月、ウイングアークテクノロジーズ株式会社に入社。現在、経営・エンドユーザー・IT部門の「三方一両“得”」になるIT基盤構想を提唱し、「出力HUB化構想」を推進する。


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