存在さえ危ぶまれる日本の製造業――マーケティングの見直しを:顧客関係のマネジメント(2/2 ページ)
復権を目指し、商品開発にまい進する日本のメーカー。しかし経営指標を見ても海外メーカーとの差は歴然としている。過剰な品質で価格競争にはまってしまう前にやるべきことがある。
顧客の課題解決こそが営業の役割
ここ5年ほどの間に、営業改革に取り組むメーカーが増えてきている。従来の属人的な営業では、顧客との関係の構築は営業マンに一任されてきた。したがって、有能な営業マンの場合は、顧客との間に広く、深く関係を構築することができる。しかし、その営業マンがいなくなると、とたんに顧客との関係が途切れてしまうことになる。
属人的な営業の仕方では、どうしても顧客との関係が長続きしないのだ。そのために、メーカーも営業の改革に取り組むわけである。
ほとんどのメーカーでは、できる営業マンのやり方をマニュアル化して、スキルアップ研修を行うことによって標準化し、誰もが同じようにできるようにしようとする。だが、それでは画一化されるために、発展性がないという問題が新たに出てくる。
では、営業マンに創意工夫をこらし、意欲的に仕事に取り組んでもらうにはどうすればいいだろうか。答えは、プロセス型の営業に転換することだ。
プロセス型の営業というのは、プロ野球の投手起用のように、先発、中継ぎ、押さえという風に役割をきっちりと分担するやり方である。役割がはっきりしていれば、その役割を果たそうとして、それぞれが意欲を持って積極的に創意工夫をこらすようになるのだ。
ところで、BtoCの場合は顧客の顔が見えないので、ブランドを媒体にして1人でも多くの顧客をコントロールしようとする。それに対して、BtoBの場合は顧客の顔が見えるので、あくまでも人が媒体になる。
したがって、BtoBにおける営業の役割は商品を売り込むことではなく、顧客の課題を解決することなのだ。課題解決が最優先であり、売り上げや利益は二の次である。売上や利益については、マネジャーが責任を負うべきなのだ。このように営業の役割を明確化することは、営業を改革する上で重要なポイントになる。(早稲田大学 IT戦略研究所主催「エグゼクティブ リーダーズフォーラム 第21回インタラクティブ・ミーティング」での講演をもとに構成)
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