基幹システムに新しい息吹を【前編】:老舗ワイナリーに魅せられたCIO(1/2 ページ)
コーベルのCIO、ロバート・バーンズ氏は、19世紀創業のワイナリーである同社に、21世紀のITを取り入れた。ERPプロジェクトの迷走とBIシステムのトラブルに終止符を打ち、同社の発展に寄与したそのノウハウとは?
商品の不良とリコールは企業にとって悪夢だ。カリフォルニア州ソノマ郡にある1882年設立のワイナリー、コーベル・シャンパン・セラーズのCIOを務めるロバート・バーンズ氏は、同社のワインがバイオテロの標的になるという最悪のシナリオに備えている。
米国食品医薬品局(FDA)が2002年公衆衛生安全保障バイオテロリズム法(バイオテロ法)の一環として、「食品、飲料メーカーは、商品の原材料とその調達経路、および製造工程に関する詳細を、24時間以内に追跡できなければならない」という規制を導入する方針を打ち出したとき、コーベルは予行演習を実施した。必要な情報をすべてそろえるには24時間ではとても足りず、しかも多くのスタッフがかかりきりにならなければならなかった。同社はすべてのデータをWine Production System(WiPS)で管理していたにもかかわらずだ(老朽化したシステムであるが)。
このシステムには、ガラスボトル、コルク、ぶどうの調達先、ワインがどの樽(たる)に貯蔵されていたか、使用された酵母の種類など、ワイン造りにかかわる情報が網羅的に保存されていた。
「われわれの業界は規制が厳しい」とバーンズ氏は語る。「ボトル内のあらゆるものをさかのぼって追跡しなければならない。われわれは必要なすべてのデータを持っていたが、追跡には数日かかった」
ワイナリーはどこもこのコンプライアンス問題への対応に苦労している。「業界にとって非常に頭の痛い問題だ」とマック・シュウィング氏は語る。同氏はデロイト&トウシュの元コンサルタントで、現在はソノマ州立大学ワインビジネスプログラムのディレクターを務めている。
「FDAは、ワイナリーがそうした情報を数時間で用意できることを求めている。これまでワイン業界は、FDAからこれほど難しい課題を課されたことはなかった」
追跡作業も数時間で可能
バーンズ氏は02年バイオテロ法の順守に加えて、コーベルの基幹システムの刷新にも追われていた。同社ではエンタープライズリソースプランニング(ERP)システムの導入展開が難航していたほか、ビジネスインテリジェンス(BI)システムでエラーが頻発していた。
バーンズ氏は、新しい連邦規制(2007年施行)に対応するには、コーベルは、イースカイ・ソリューションズの開発によるWiPSをアップグレードする必要があると判断した。コンプライアンスデータの収集とリポートを容易にするソフトウェアを備えた新WiPSシステムを稼働させることで、ワインの原材料と醸造過程に関する詳細を追跡する予行演習は大幅にスピードアップ、新規制に難なく対応できるようになった。
「今では、われわれは数時間で追跡作業を行える」とバーンズ氏。「だがわれわれの目標は、もっと速く情報を入手することだ。包括的なコンプライアンスの確保が大きな課題となっている。コンプライアンスの難しさは、当局は法令を出すが、ではそれを順守するために具体的に何をしなければならないかがはっきりしないことから来ている。われわれはそれを継続的に模索し、実行していかなければならない。そのために膨大な時間を取られる」
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