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米環境保護庁が画策する新たなENERGY STARプログラム(前編)トレンドフォーカス(1/2 ページ)

IT業界は過去5〜6年で電力消費が倍増し、重厚長大産業と同様にエネルギー集約型の産業に変わりつつある中、省エネ性能を測定するベンチマークや世界共通のメトリックスを設け、エネルギー効率の良いデータセンターを定義づける動きが米国で始まっている。

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省エネに貪欲な米国のENERGY STAR

 「従来型のビジネスを継続してエネルギー消費を増加させることは、もはや許されない状況にある。だが、このような厳しい現実を見つめると、新しいビジネスチャンスが生まれるものだ。昨今のグリーンITへの関心は、そんな新たなビジネスへの可能性や大きなリターンの期待感の高まりといえる」

 そう語るのは、米国環境保護庁(EPA)の気候保護パートナーシップ部門でENERGY STARプログラムの責任者を務めるアンドリュー・ファナラ氏だ。7月16日に東京・六本木で開催された「AMD Green IT 2008」で、米国政府によるグリーンIT推進活動について講演した同氏は、現在仕様の策定が進行中であるENERGY STARの「データセンター・ベンチマークメトリックス」や、「ENERGY STAR for Servers」に関連した現状報告が注目を集めた。

 米国や日本、カナダ、EU、オーストラリアなど7カ国で、オフィス機器等の省エネ認定を証明する「ENERGY STAR」は、1995年に日米で相互認証が承認され、日本では経済産業省が登録管理の所管となっている。


「データセンターの省エネはチャレンジであり、ビジネスとしてのチャンスでもある」と語るEPAのファナラ氏

 日本でのENERGY STARプログラムは、その対象製品をPC、ディスプレイ、プリンタなど8品目に限定しているのに対し、米国ではその他の約40品目にも広げ、家電や住宅、オフィスビル等も対象としているのが特徴だ。

 2007年7月に発効したENERGY STAR 4.0では高効率の電源を使用することを定め、非準拠製品と比べて65%も効率の改善を目指すなど、地球温暖化対策を追い風に電力消費削減のハードルを高め続けている。

IT機器から建物まで網羅した標準化が必要

 ファナラ氏によると、EPAでは07年8月にレポート(「Report to Congress on Server and Data Center Energy Efficiency」)を作成し、米国議会に対してさまざまな提言を行ったという。その報告のハイライトはやはり電力消費の増大と環境への影響だ。

 2006年時点での米国国内のデータセンターでの電力使用状況は610億kWh、45億ドルのコストとなり、米国全体の電力使用量の約1.5%を占めるという。3年後の2011年時点での電力消費は1000億kWh、コストも74億ドルに急増すると予測され、それを補うための発電所が10基も必要になるという。


ENERGY STARは、個人向け製品を始め、住宅の省エネや、中小企業を含めた多くの商業・産業分野における企業のエネルギー管理にまで浸透している

 だが、EPAでは達成可能なベストプラクティスを設け、それらのエネルギー削減計画が効を奏すれば、電力消費は230億〜740億kWh程度、160億〜510億ドル程度にまで抑制され、発電所15基分の電力とCO2を15〜47MMTCO(million metric tons of carbon dioxide)分が削減できるといった提案を行っている。

 特に、データセンター・IT機器・インフラ・サービスの全てを網羅する標準化や測定方法の確立、ベストプラクティスの共有、さらには研究開発への投資などが重要だと提言している。それらが可能になるならば、各企業が同じ土俵で省エネを競い合うことができ、限られたリソースを活用することも可能になるというわけだ。

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