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競争力を高めるベストプラクティスを探せWeb革新を経営に取り込む(2/4 ページ)

いまださまざまな解釈と評価に分かれるWeb2.0。しかし、すでに経営のあらゆるシーンで、その成果が上がりつつある。顧客と経営をより密接につなぎ、収益性もアップ──。そんな実例をレポートする。

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01 小売業:ブログとRSSフィードで豊かな実りを実現した

 1800年代に家族経営の園芸ビジネスとしてスタートした会社が次世代インターネット技術のリーダーになるとは、誰が予想しただろう。バーピーは最もスタンダードなWeb2.0技術の実装に成功した。同社に大きな効果をもたらしたのは、ブログとRSSフィードだ。

 読み物を見つけるためにRSSフィードを利用していた従業員のアドバイスで、同社は2年ほど前、自前のフィードを立ち上げ、顧客の庭の紹介や新製品、特売品の告知、園芸のヒントなどをまとめたブログをスタートさせた。そしてバーピーは、顧客が製品レビューを投稿できるようにするため、バザーボイス社のツールを追加導入した。

 「隣家の人と庭の垣根越しに話をするような感覚だ。季節ごとのアプローチではなく、顧客とコンスタントにコミュニケーションを図ることができる」とザイドラー氏は言う。バーピーのようなミッドマーケット企業は通常、CIOたちがWeb2.0プロジェクトを主導しているが、経営陣の中には電子コマースの専門家も多い。

マーケットに種をまく:Web2.0に取り組み、顧客との双方向コミュニケーションを実現して、バーピーは売上げを伸ばした──ドン・ザイドラー氏
マーケットに種をまく:Web2.0に取り組み、顧客との双方向コミュニケーションを実現して、バーピーは売上げを伸ばした──ドン・ザイドラー氏

 同社では、Web2.0ツールの導入によってもたらされた実証的メリットは計測していないものの、売上高はフィードの開始直後から順調に伸びているという。

 ザイドラー氏と社長、上級副社長たちは、顧客向けのフォーラムを置くと、自社製品に批判的な意見が書き込まれるのではないかと心配していた。しかしザイドラー氏によると、ほとんどのコメントは比較的フェアなものだという。同社では当初から、1つの方針を維持している。それは、不正確な情報が投稿された場合、例えば流通に起因する問題であるにもかかわらず、製品への苦情が寄せられたときなど、サイトから削除する権利を留保していることだ。

 顧客の製品レビューは、不利益よりもはるかに大きなメリットをもたらした。評判の良い製品が販売を伸ばし、評判の悪い製品が販売を減らしても、それをカバーして余りある利益が得られるからだ。またザイドラー氏によると、製品レビューはバーピーの経営陣を啓発するとともに、顧客からのフィードバックが製品の改善に大きく貢献しているという。「フォーカスグループでは、こうした臨界点を超えることはできない」と同氏は語る。

02 転職情報サービス:新ツール導入後、登録件数は3カ月で300万件に

 IT人材紹介ビジネスで38年の実績を誇るTACワールドワイドは、求職者15万人の履歴書をデータベース化していた。それだけでも大変な数字に聞こえるが、同社の副社長でCIOのスティーブ・モリン氏によると、創業以来のマジックが始まったのは、Webベースの新しいリクルートメントツール、TACSourceを導入してからだという。事実、わずか3カ月で、TACのデータベースに登録された履歴書は300万件に達した。

 「データベースの爆発的な膨張にわれわれは圧倒された」と語るのは、マサチューセッツ州デッドハムのTAC(従業員数550人)で9年前からCIOを務めるモリン氏だ。「われわれの網は一気に20倍に拡張した」

 現在、同社のスタッフ400人ほどが、サードパーティのベンダーにホストされたTACSourceのパワフルな検索照合機能を利用している。このアプリケーションの役割は3つある。まず、TACとクライアントをWebでダイレクトにつなぎ、企業側からTACのリクルーターへ職務内容説明書をリアルタイムで送信できるようになっている。一方、TACは企業の求人情報を自動的に検索することが可能だ。そして現在特許出願中のアルゴリズムにより、リクルーターは求人条件に適合する人材の履歴書を自動的に表示させることができる。「これらのことをインテリジェントかつ自動的に実行できるのは革命的」と、同社のIT予算750万ドルを管理するモリン氏は胸を張る。リクルーターはまた、プロセス中にさまざまなキーワードを入力し、50件の検索結果を、例えば5件に絞り込むことも可能だ。

 「このアプリケーションは非常にユニークだ。ドキュメント、すなわち履歴のデータを、地域、スキルセット、経験など、さまざまなパラメータを使ってピンポイントで絞り込むことができる」と同氏。

意識改革:Web2.0でサービスを強化し、従業員の成績は25%以上向上した──TACワールドワイドのCIO、スティーブ・モリン氏
意識改革:Web2.0でサービスを強化し、従業員の成績は25%以上向上した──TACワールドワイドのCIO、スティーブ・モリン氏

 昨年6月、TACはRSSフィードの試験運用を開始した。これにより、例えばダラスのエンジニアリング会社は、ダラス周辺に在住する求職者や特定のスキルを持つ技術者の情報をRSSフィードで受信することが可能になった。一方、仕事を探している人々は特定の産業や地域向けの最新の求人情報をティッカー形式で受信できるようになった。

 「新しい技術は非常に有効だ」とモリン氏は述べ、次期四半期にもクライアントの確認を得て、2008年早期に本格運用に移行したい考えを示した。「Web2.0は常にわれわれの念頭にある」

 同社が導入したツールキットは、「CIOの仕事を事業収益性重視に向わせる変化をもたらした」とモリン氏は話す。「TACSourceや他のソリューションを核にWebを活用すれば、クライアントに提供できる付加価値サービスの幅を広げることができる。そうしたイニシアティブは、社内と社外を結ぶコアプロセスにITがどう組み込まれていくかを示す好例だ」

 従業員間の情報共有を目的とするWebプロジェクトでしばしば見られることだが、同社のシステムに対しても当初は若干の抵抗があった。この業界で長く働きノウハウを蓄積してきた古参のリクルーターたちは、誰もがプールされた情報にアクセスできるようになれば、自分たちの優位性が失われると懸念したのだ。しかしモリン氏は、めざましい導入効果─人材紹介の迅速化がリクルーターたちの説得に役立ったと話す。

 TACのエグゼクティブたちは、TACSourceの導入によって、リクルーター全体の週ベースの成績が25%向上したと見ている。IT技術に精通したリクルーターの中には、すでに成績を2倍に伸ばした者も出ているという。そしてTACSourceを利用するクライアントは、人材獲得までの時間が短縮されたことを高く評価している。「リアルタイムで、プロアクティブに必要な人材を確保できるようになったからだ」(モリン氏)

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