星野ジャパンが勝てなかった理由:問われるコーチング力(1/2 ページ)
おおかたの期待を裏切り北京五輪4位に終わった野球。なぜ星野ジャパンは勝てなかったのか? 企業における組織のあり方から考えてみたい。
「問われるコーチング力」バックナンバーはこちら
北京オリンピックで念願の金メダルを獲得した女子ソフトボールチーム。優勝の瞬間には、多くの人が大きな感動を覚えたのではないだろうか。一方で、人気や才能を兼ね備えたプロ野球選手を集めた星野ジャパンは、メダルを獲れないという結果に終わった。
その違いは、何だったのだろうか? わたしは、「組織遂行力」を発揮できたかどうかだと考えている。
組織遂行力とは、「組織のゴールに向かってメンバー全員が、一致協力して決めた戦術を実行し、成果を出し続ける力」である。リーダーの人に肝に銘じてほしいことがある。いくら個々人の能力が高くても、この組織遂行力のない組織では、成果を出すことはできない。
能力の高い人が集まっているにもかかわらず、業績がまったく上がらない組織が数多くある。能力の高い人がいるからといって、必ずしも組織の能力が高くなるとは限らない。なぜなら、それぞれの能力が発揮されていないのである。
その主な原因は、次の4つである。
- メンバーが組織のゴールやビジョンを理解できていない。
- 組織の成功を個人の成功と結びつけられていない(これを達成したら自分にどんなメリットがあるのか分かっていない)。
- 情報の共有ができていない。
- 高い目標や戦術を持っているものの、実践・実行が伴っていない。
女子ソフトと星野ジャパンの決定的な違い
星野ジャパンと女子ソフトボールチームの違いは、この組織遂行力があったかどうかの違いである。女子ソフトボールチームは、ゴールに向かって、皆が一致団結して、力を発揮した。アメリカに勝って金メダルを獲ることを目指し、前回のアテネオリンピック以降、アメリカチームをはじめ、多くのチームを徹底的に研究した。準備を怠らず、勝つ戦術をしっかりと練った。そして、世界一になるという目標を掲げ、エース・上野投手を中心に皆が協力し合った。
また、お互いに腹の底から議論し、情報を共有し、信頼関係ができていたのである。信頼関係とは、メンバーの強いところも弱いところも、それぞれがよく分かり、相互理解していたということである。話し合い、議論することで、揺ぎない信頼関係を築き上げたのである。
勝つためには、時には意見がぶつかることも、けんかをすることもある。しかし、それはすべて金メダルを獲るというゴールのためであり、全員がそのことを認識している。全員がゴールに向かって協力して、決めた戦術を実行し成果を出した――組織遂行力が発揮できたのである。
一方、星野ジャパンはどうだろうか。
一流のプロ野球選手を集め、金メダルを獲って当たり前と言われたが、勝つための準備を十分にできていただろうか? しっかりとした戦術や戦略が練られていただろうか? その戦術をしっかりと実践・実行していっただろうか。お互いの信頼関係が出来上がっていただろうか。けんかするくらい、たくさん議論をしただろうか。
一人ひとりの能力が高くても、同じゴールに向かわないと金メダルは獲れない――組織力は発揮されないのである。女子ソフトボールチームと星野ジャパンの姿は、組織遂行力の大切さを改めて認識させてくれるものである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.