星野ジャパンが勝てなかった理由:問われるコーチング力(2/2 ページ)
おおかたの期待を裏切り北京五輪4位に終わった野球。なぜ星野ジャパンは勝てなかったのか? 企業における組織のあり方から考えてみたい。
まずゴールを見据えよ
それでは、組織遂行力のある組織とは、具体的にはどのような組織であろうか。次の8つである。
- ビジョンやゴールが明確である。
- メンバーがそのビジョンやゴールを理解している。
- ゴールを達成するための戦術が明確である。
- メンバー全員がゴールに向かって、一致協力していく戦術を実行していく。
- メンバーの相互理解と信頼関係が築かれていて、情報共有の仕組みが出来ている。
- メンバーが、組織が成功することが、自分が成長することにつながると考えている。
- メンバーが自発的に考え、情報を共有し、実践・実行するということが習慣になっている。
- 継続的に成果を出す体質になっている。
このような組織遂行力を発揮する組織をつくることが、リーダーの役割である。組織のビジョンやゴールを明確にし、メンバー全員で徹底的に議論し、そのビジョンやゴールの理解に努める。そして、ゴールを達成するための戦術を明確にし、メンバー全員で協力して、ゴールに向かってその戦術を実践・実行していく。
メンバーも組織が勝つことが自分自身の成長につながると考え、自発的に行動することを習慣にする。
成果を出し続ける組織
大切なのは、成果を出し続ける体質になることである。企業は一度成果を出せばいいというものではなく、成果を出し続けないと存続できない。結果を出すことを習慣化することが重要である。
人には活躍するステージが必要である。いくら有能な人でも、発揮する場所がなければ宝の持ち腐れである。ただ、個々人が勝手に力を発揮しても、組織として成果を出すことはできない。
個人がそれぞれの能力を生かしつつ、ほかのメンバーとともに力を合わせても活躍する。そしてチームとなって活躍する。そのステージをつくることが大切である。リーダーがそうしたステージを提供することで、メンバー全員が能力を発揮し、成果を出し続ける組織になるのである。
組織遂行力のある組織について述べたが、次回は組織遂行力が低下している組織について、もう少し掘り下げてみていきたい。
プロフィール
細川馨(ほそかわ かおる)
ビジネスコーチ株式会社代表取締役
外資系生命保険入社。支社長、支社開発室長などを経て、2003年にプロコーチとして独立。2005年に当社を設立し、代表取締役に就任。コーチングを勤務先の保険会社に導入し、独自の営業システムを構築、業績を著しく伸ばす。業績を必ず伸ばす「コンサルティングコーチング」を独自のスタイルとし、現在大企業管理職への研修、企業のコーポレートコーチとして活躍。日経ビジネスアソシエ、日経ベンチャー、東商新聞連載。世界ビジネスコーチ協会資格検定委員会委員、CFP認定者、早稲田大学ビジネス情報アカデミー講師。
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