社員がわくわくする組織のつくり方:問われるコーチング力(1/2 ページ)
「ビジョン」「目標」「戦略」「ミッション」「価値観」「コミットメント」。これらは企業リーダーが部下をわくわくさせるような組織をつくるための重要なキーワードである。
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東京証券取引所第1部に上場している株式会社あさひという企業をご存知だろうか? 現在、環境への配慮から自転車の需要が伸びているが、この会社は「店舗販売」と「ネット販売」という2つの分野で従来の常識を打ち破った事業を展開し、日本の自転車小売業界でナンバー1の地位を確立しつつある企業である。
あさひの経営理念は明確である。
「わたしたちは、自転車を通じて世界の人々に貢献できる企業を目指します。そして、その企業目的に賛同し、参画するすべての人々が、豊かな人生が送れることを目指します」
あさひはこの理念を掲げ、「サイクルライフをサポートする」という使命の下、「店舗販売」と「ネット販売」という2つの分野が鍵になると考え、独自の販売戦略を立て大きな成功を収めているのである。
前回、組織遂行力が低下している組織について触れ、組織遂行力を高めていくことがリーダーに求められると述べた。組織を勝たせるためには、目標と戦略、そして、戦略を日々の行動に落とし込んで遂行することが必要になる。今回は、組織遂行力を高め、組織の方向を決める「ビジネスコーチングモデル」について話したい。
ビジネスコーチングを支える要素
ビジネスコーチングモデルは、次のような構造になっている。
「価値観」と「ミッション」が組織の土台となる部分であり、「ビジョン」は組織に属するメンバー全員がわくわくするような組織の目的地である。「コミットメント」は目的地に向けて突き進むための推進力で、その力と有効な「戦略」を用いて「目標」を達成する。それぞれについては、次回以降詳しく説明するとして、今回は概略を解説する。
「ビジョン」
ビジョンとは会社の夢である。こういう風になってほしいという将来像ともいえる。考えてみてほしい。あなたの会社のビジョンは明確になっているだろうか? ビジョンについて話す中で、わたしが懸念していることがある。それは、組織に属する個人が夢を持っているかどうかということである。
「あなたの夢は何ですか?」。周囲の人とこのような話をするだろうか? 恐らくほとんどなされていないはずである。子供の頃は自分の夢について語っていたはずなのに、年を重ねるとともにそのような話をしなくなってしまった。リーダーは、メンバーにそれぞれの夢を聞いてあげればよい。それだけで親近感がわき、メンバー同士のコミュニケーションが円滑に進むようになるはずである。
それぞれのメンバーが持つビジョンを組織内で語り合い、組織のビジョンを作っていく。こんな会社にしたい、わくわくするこんな組織にしたい。組織の夢を皆でつくり上げることがリーダーとして最も重要な仕事である。
手前みそになるが、わが社では、「日本の会社の1社に1人、ビジネスコーチを作る」というビジョンを持っている。それを持つことで、メンバーのモチベーションが上がり、会社の能力が引き出されていった。当社の研修やセミナーを受けた人たちが、それぞれの会社で活躍していく、それがわたしにとって一番うれしいことである。
リーダーが自己変革する上で肝に銘じてほしいのが、「わたし」のビジョンではなく、「われわれ」のビジョンという視点を持つことである。「わたしの夢」を語る人はいるが、「われわれの夢」という視点で物事を考える人は少ない。リーダーには「われわれ」という視点を持ってほしい。なお、ビジョンは常に全員が意識した方がいいので、社内の見やすい位置に掲げることを勧める。
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