社員がわくわくする組織のつくり方:問われるコーチング力(2/2 ページ)
「ビジョン」「目標」「戦略」「ミッション」「価値観」「コミットメント」。これらは企業リーダーが部下をわくわくさせるような組織をつくるための重要なキーワードである。
「目標」
目標とは定量的なものである。数字で示されるとともに、期日が決まっているものである。期限は最長でも1年。皆が納得するものでなければならない。ビジョンがあってもこの目標が明確でなければ、メンバーがどこに向かっていいか分からなくなる。逆に目標にこだわればこだわるほど、到達できる可能性は高くなる。
「戦略」
戦略とは目標を達成するために、何を(What)どうやって(How)行うかということである。戦略を立てる上で大切なことは何だろうか? 一番重要なのは、メンバー全員でお互いに激しく議論し合うことである。ある戦略を用いて目標を達成するためには、「わたしはこう思う」、「おれはこれがいいと思う」など、意見の衝突が必要である。もっとも、真剣に考えていれば、自然と意見の衝突が起こるはずである。衝突のない戦略は、単なる戦略が絵に描いてあるだけで、責任感のない戦略になる。そして、その組織は無責任の集団になるだけである。
「ミッション」
ミッションとは何を持って同業他社に勝つのかということである。顧客サービスなのか、価格なのか、マーケティングなのか……。会社によって異なるが、会社の強みや会社にとって最も重要な存在理由を見出し、決定していく。ここでもやはり議論が必要である。
「価値観」
価値観とは、組織に属するメンバーが仕事で何を重んじているかということである。「それぞれが持っている価値観は違う」ということをメンバー全員が認識し、具体的にその価値観に応じてどのように行動するかが大事になる。
例えば、信頼関係が大切だと思うのであれば、そのために具体的にどう行動したらよいかを考えることになる。顧客や社内の人に対して、信頼関係を構築するためにさまざまな価値観を受け入れ、柔軟に対応していくことが求められる。
「コミットメント」
最後に、コミットメントとは目的地に向けて突き進むための遂行力で、決まったことは必ずやるということである。ミッションやビジョンが共有されると、組織の中に一体感が生まれ、業務がスムーズに進むようになる。しかしながら、一体感だけで業績が上がるわけではない。次の段階として、掲げたミッションやビジョンを確実に実現する具体的な行動が求められる。その役割を担っているのが、コミットメントである。コミットメントはミッションやビジョンを達成するために、誰が何をいつまでに実現するのかについて、自発的かつ具体的に決めること(もしくはその内容)である。
メンバーと徹底的に議論し合って、価値観、ミッション、戦略、目標、ビジョンを決定し、それらを全員でコミットメントする。このようなビジネスコーチングモデルを作るのは意外に簡単だ。しかし、実行することが大切なのであり、それがリーダーの仕事である。
次回以降は、それぞれの項目について、具体例を挙げながら話していきたい。
プロフィール
細川馨(ほそかわ かおる)
ビジネスコーチ株式会社代表取締役
外資系生命保険入社。支社長、支社開発室長などを経て、2003年にプロコーチとして独立。2005年に当社を設立し、代表取締役に就任。コーチングを勤務先の保険会社に導入し、独自の営業システムを構築、業績を著しく伸ばす。業績を必ず伸ばす「コンサルティングコーチング」を独自のスタイルとし、現在大企業管理職への研修、企業のコーポレートコーチとして活躍。日経ビジネスアソシエ、日経ベンチャー、東商新聞連載。世界ビジネスコーチ協会資格検定委員会委員、CFP認定者、早稲田大学ビジネス情報アカデミー講師。
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