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破たんした証券会社と成長を遂げた寒天会社、何が明暗を分けたのか?問われるコーチング力(1/2 ページ)

経営破たんした米Lehman Brothers。その理由は企業ビジョンと現実のギャップだと指摘する。一方で、長野県のある食品メーカーは実直な経営ビジョンが好業績を支えているという。

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 前回、組織の遂行力を高める「ビジネスコーチングモデル」について述べた。これから3回に分けて、ビジネスコーチングモデルの中でも重要な「ビジョン」「価値観」「ミッション」に関して、事例を交えながら説明する。今回は、今まさに起きている米国の金融危機に見る企業の「ビジョン」の重要性を話す。

 数週間前、米国の金融業界に衝撃が走った。米Lehman Brothersが経営破たんし、米Merrill Lynchが最大手銀行の米Bank of Americaに買収された。Lehmanは米証券業界第4位で150年以上の歴史を持つ。同3位のMerrillは90年以上の歴史があり、会社のロゴであるブルのマークは「ウォール・ストリートは常に繁栄する」という意味が込められている。同5位の米Bear Stearnsは公的資金を注入して救われ、米JPMorgan Chaseが買収することになった。さらに、第2位の米Morgan Stanleyには三菱UFJフィナンシャルグループが約9000億円出資することが明らかになった。

 なぜこのような事態になってしまったのか。わたしはそれぞれの企業が素晴らしいビジョンを持ちつつも、それを軽視して事業を進めてしまったからだと考える。Lehmanのビジョンを調べてみると、次のような経営理念を掲げている。

 One Firm―同じ目的へ向かって、全員が連携する。これがリーマン・ブラザーズの基本となる理念です。優れた個の力が同じ目的意識を持てば、より大きな成果をもたらします。わたしたちリーマン・ブラザーズは、お客様、株主、そして一人ひとりの社員が、ひとつの求心力で結ばれたOne Firmです。すべての社員が「お客様の成功」という目標に向かって最大限に能力を発揮し、株主利益の向上に努めます(同社サイトより抜粋)

 Lehmanは近年、不動産関連の事業を積極的に手掛けてきた。そのために、昨年発生したサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題で大きな損失を被り、破たんした。果たして、このビジョンのように、お客様、株主、そして一人ひとりの社員が、ひとつの求心力に結ばれていただろうか?

ビジョンを常に振り返る

 ビジョンとは、一般に将来の展望のことをいうが、わたしは夢だと考えている。ビジネスリーダーは「わたし」のビジョンではなく、「われわれ」のビジョンという視点を持ってほしいと前回も述べた。ビジネスコーチングモデルにおけるビジョンとは、「組織の目指す理想の姿」を指す。

 ビジョンに必要なものは次の3つである。

  1. 組織のモチベーションを高めるものである
  2. わくわくするものである
  3. 会社の姿勢が明確に伝わるものである

 ビジョンは組織のモチベーションを高め、目標達成に向けて一丸となり進んでいけるよう、わくわくしたものがよい。加えて、会社の姿勢が外部の人に対して明確に伝わることが大切である。何よりも、設定したビジョンの実現を目指して進むため、事あるごとに「ビジョンに対して今はどの段階にいるのか」を確認することが不可欠である。

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