世界的金融グループが「炭素原則」を発表
地球のCO2の吸収力は31億炭素トンだが、排出量はすでに80億炭素トンを超えている。そのために、EUでは2020年までに排出量の20%削減を目標として掲げているし、米国でもマケイン候補は2050年までに60%、オバマ候補は80%の削減をそれぞれ選挙公約として発表している。
そんな中で、米国のトップグループの金融機関であるCitigroup、JPM Chase、Morgan Stanleyは2008年2月に「炭素原則」という非常に耳慣れない原則を発表した。どういう原則かというと、1つは省エネや再生可能エネルギー分野にもっと投資や融資を進めていくというものである。そしてもう1つは、石炭火力発電所についてはこれからもっと厳しい審査体制を敷くというものである。
石炭火力発電所はCO2を大量に排出する。米国では、CO2の総排出量の3分の1は石炭火力発電所から排出されている。したがって、石炭火力発電所に対する市民社会からのプレッシャーが極めて強くなっている。そのようなプレッシャーを受けている石炭火力発電所に対して、米国の金融グループは一段と厳しい審査を実施するという原則を発表しているのである。
さらにBank of Americaの頭取は、顧客に対してこんなことを言い始めている。「みなさんが出すCO2はこれから借金として計算します。1トン当たり20ドルから40ドルで借金とみなして貸し出し審査を行います」というのである。こんなことはもちろん、今まではまったく例がないことであり、まさに大きな変化の始まりである。
地球温暖化問題は今や、経済の問題、産業の問題、個人の生活の問題になっているのである。
(早稲田大学IT戦略研究所主催、エグゼクティブリーダーズフォーラム第22回インタラクティブ・ミーティング講演「地球温暖化が変える企業経営」より)
プロフィール
すえよし・たけじろう 日興アセットマネジメント副社長時代にUNEPFIの運営委員会のメンバーに就任。これをきっかけに、この運動の支援に乗り出した。2002年6月の退社を機に、UNEPFI国際会議の東京招致に専念。2003年10月の東京会議を成功裏に終えた。現在も、引き続きUNEPFIに関わるほか、環境問題や企業の社会的責任(CSR/SRI)について、各種審議会、講演、TV等で啓蒙に努めている。この他、社外取締役や社外監査役にも就いている。著書に「日本新生」北星堂、「カーボン・リスク」北星堂(共著)、「有害連鎖」幻冬舎。
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