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サルコジのしたたかさは暗黙知フランスに行ってみますか?(1/2 ページ)

EU議長国であるフランスの指導者として金融危機にいち早く対処したサルコジ大統領。欧州経済の連合政府を提案するなど積極的な取り組みが目立つ。ドイツをはじめとするEU諸国はサルコジの“腹の底”をよく理解しているが故に、距離を保ちつつ落としどころを探っている。

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 大国アメリカの大統領選挙である。フランス人だって当然興味は持っている。どの国の国民生活であれ今後4年間、この選挙の結果に左右されるのだ。

 9.11以降、米国が掲げるテロとの戦いの中で、イラク開戦に反対したフランスはドイツなどとともに「古い欧州」のレッテルを貼られ、米国との関係は極めて冷え込んだ。しかしフランスは最後まで折れなかった。今では終わった話のような調子で米仏の対立はまったくの過去の出来事のように語られている。なんと複雑怪奇! とはいえ、米国大統領選挙に関するフランスのメディア報道を見るにつけ、8年間のブッシュ政権に対してフランス人がいかにうんざりしていたかということはよく分かる。

 バラク・オバマ次期米国政権によって対外政策にいかなる変化がもたらされるか不透明ではあるものの、ブッシュ政権よりはましではないかといった漠然とした期待感がフランス市民の間にはあるようである。

欧州経済政府を打ち立てるも……

フランスの銀行大手、BNPパリバなど「金融危機はチャンス」ととらえる企業も
フランスの銀行大手、BNPパリバなど「金融危機はチャンス」ととらえる企業も

 さて米国大統領選挙の争点の一つでもあったように、目下世界経済は危機の中にある。フランスでも新聞や雑誌に連日「CRISE=危機」の文字が踊る。これに関して近ごろ欧州政界で興味深い動きが見られた。

 10月4日、サルコジ仏大統領の呼び掛けで経済危機への対策を話し合うための英仏独伊による4カ国首脳会談がパリで開催された。しかし結果は具体的な内容に乏しく、この会議に招かれなかったスペインのサパテロ首相の提案という形で、同12日にユーログループ全体(15カ国)での首脳会議が開催されるに至った。実はこの首脳会合の開催に気をよくしたサルコジ大統領がこれを前例として首脳会合を一種の「欧州経済政府」に発展させようと提案した。この提案を11月3日にユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のユンケル議長(ルクセンブルグ首相兼財務相)が事実上拒否したのである。

 現在ユーロ圏においては、財務相会合が毎月定期的に開催され、ユーロ加盟各国と欧州中央銀行の橋渡し役を務めている。かたや同財務相会合の上位にある首脳会合は定期的に開催されているわけではない。サルコジ大統領は、ユーロ圏首脳会合の定期的な開催などを通して、ユーロ圏諸首脳による金融問題へのガバナンス力を高めようと考えたと思われる。

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