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「うちのシステムを使え」「はい」は最悪の事態を招く間違いだらけのIT経営(1/2 ページ)

外注先の企業が自社と同水準のITに対応していないがために、必要以上に業務効率が悪化したという経験をお持ちの読者は多いのではないか。ただし、そこで自社のシステムを無理やり導入させると大失敗する。

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 企業へのIT導入を成功に導くキーパーソンや方法について、さまざまな事例を紹介してきた。今回は、「外注」を取り上げたい。

 これまで外注は永年業務のしわ寄せ、あるいは吹き溜まりの場所とされてきたため、その業務実態を眺めると実にIT化に対応しにくい条件がそろっていることが分かる。例えば製造業の場合、少品種多量生産品は内作とし、多品種小量生産品が外注へ出された。外注先企業はその立場の弱さから、短納期を押し付けられ、急な納期変更にも応えなければならなかったほか、継続的に厳しいコストダウンの要求を突きつけられ、在庫の調整役までも担わされてきた。外注先企業にとってそれらを断ることは、受注の減少を覚悟しなければならない。

 さらには、事業環境が厳しさを増す現在、外注先の企業であっても業務の改善を徹底してIT化しなければ、取引先の要求に応えられなくなってきている。仕事を発注する側としても、外注先に業務改善をしてITを導入してもらわないと、自社でいくら業務改革を行っても、外注比率分の業務が旧態依然としていては、納期も品質もコストも何もかもブラックボックス化してしまい、業務全体に支障をきたすことになる。外注先を何とかしなければならないのは明白だ。

イエスマンでは失敗は目に見えている

 しかし、発注側が「うちのシステムを使え」というようでは当然駄目だ。外注先も単に「はい」と従うべきでない。なぜなら両社は業務の内容も置かれた状況も違うのだから。

 失敗例を紹介する。某大手機械メーカーが統合基幹業務システム(ERP)パッケージ「SAP/R3」を導入することになり、外注先企業にも情報共有化を理由にSAP/R3の導入を義務付けた。外注先に対して説明会を2、3回開催したが、外注先は希望を言える雰囲気ではなかった。いざ導入となって、中堅の外注先はなんとか対応できたが、ほとんどの中小外注先は苦しめられた。導入したものの業務についていけない、条件整備ができないなどの理由から、SAP/R3は表面上では稼働し、実務は従来システムや手作業の延長だった。投資はまったくの無駄で、逆に業務の手間が従来以上に増えてしまった。

 外注先は中小企業が主である。中小企業のIT導入に関する問題点をおさらいしておく必要がある。「中小企業のIT化にあたっての問題点」は以下の通りだ。データが古いが基本的には今も変わらないはずである。


  • IT投資効果が良く分からない(38%)
  • 資金不足(27%)
  • 具体的活用方法が良く分からない(25%)
  • 人材の確保が困難(24%)
  • 社員教育が困難(17%)
  • 適切なアドバイザーの確保が困難(11%)

(中小企業IT研究会「中小企業のIT化の方向と支援策」、2001年)


 また、「IT利活用における問題と課題」(中小企業庁「中小企業IT化推進計画II」、2004年)によれば、「人材不足」「IT投資に見合う効果が得られない」が挙げられている。

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