日産自動車の新たな“挑戦”――「日産GT 2012」:「2009 逆風に立ち向かう企業」日産自動車(2/2 ページ)
2008年5月に発表した決算で、2009年3月期の連結純利益が2期ぶりの減益に転じると発表した日産自動車。そんな同社を新たな成長軌道に乗せるために策定された5カ年計画が「日産GT 2012」だ。
業務に食い込んだ知識をグローバルに展開
行徳 一般的に、今後、自動車産業のメインプレイヤーになるためには最低500万台以上の販売規模が必要と言われています。現状この条件を満たす企業は、米国と欧州で1〜2社、日本で1社程度なのが実情です。しかし当社とRenaultの販売台数を合わせれば、500万台を達成することができる。この条件をクリアするための他社の動きが注目されるところです。
ITmedia 現在取り組んでいる施策の概要について教えてください。
行徳 われわれの基本戦略は、日産自動車に蓄積され業務プロセスにまで深く食い込んだ知識をシステム化して、グローバルに展開するというものです。やはり人材には限りがあり、各リージョンに十分な人材を派遣することは難しいですから。場合によってはモジュールを追加しプロセスを支援する。こうした作業を海外市場で現在進めている段階にあります。今後、ITのシェアドサービス化やインフラの統合も視野に入れています。RenaultのグローバルCIO(最高情報責任者)とも、そろそろITインフラの統合を進めなければと話しているところです。
こうしたコンセプトの下、日本でIT戦略や予算を決定し、システムの整備を現在進めている最中です。もちろん、システムは各リージョンのニーズも考慮に入れ構築しています。特にロジスティクスなどはリージョンごとにプロセスが大きく異なります。同様に、マーケティングやセールスにまつわるシステムも各地域の顧客ニーズを考慮することが求められるため、8割近くを新たに構築しています。
一方、生産や調達といったグローバルで管理しなければならない業務は、日本のものをそのまま展開しています。一般管理にまつわるシステムは現在、リージョンごとに整備していますが、今後は同一のプロセスに統合する計画です。
ITmedia 具体的には、どのような手法でITを整備しているのでしょう。
行徳 実は日産自動車は1990年代前半、業務の現場で各種のITサービスが必要とされていたものの、情報システム部門がシステムの運用で手一杯となりニーズに迅速に対応できない状況にありました。この問題を解決するため、2005年から推進してきたのが、ワールドクラスの情報システム部門を作ることを目標に掲げた「BEST」戦略です。
BESTとは「Business Alignment」(業務部門と情報システム部門の関係強化)、「Enterprise Architecture」(情報基盤の最適化)、「Selective Sourcing」(ITベンダーとの関係の見直し)、「Technology Simplification」(テクノロジーの標準化と簡素化)の頭文字を取ったものです。例えばRenaultの取り組みを参考にEA(Enterprise Architecture)の考えを取り入れシステムの整備手法を見直したのも、情報基盤の最適化を図るためにほかなりません。この取り組みを通じ、システムの共通化とオープン化を進めたことで、システムの整備コストを3分の1にまで圧縮できています。
ITmedia 今後の目標は?
行徳 まずはRenaultとのネットワークのシームレスな統合を目指したい。そのために、セキュリティの標準化作業などに着手する計画です。これにより、ディーラーに対して情報をより容易に提供できるようになるはずです。業務の効率性を高めるために、アウトソーシング先も見直さなくてはならないでしょう。
一方で、ITの高度化に伴い情報システム部門にも変化が当然求められています。この課題に対応するため、今後内部プロセスを徹底的に見直すとともに、人材も育成していかなくてはなりません。CIOとしてやるべきことは、まだたくさん残されているのです。
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