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コラム

なるほど、それは面白いかもしれない――リーダー必須の枕ことば職場活性化術講座

リーダーはスタッフの「学ぶ意欲」をかきたてなくてはならない。そして各人の持つ「現場の知」と結び付けていく。その時、発せられたアイデアをまずは「なるほど、それは面白いかもしれない」という枕ことばで受け入れよう。そのアイデアがたとえただの改善案に毛が生えたようなものであってもだ。

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知識創造企業への挑戦を本格化せよ

 今回は『組織改革の仕掛け人』としてのリーダーシップ・コミュニケーションの第3回目、「学習推進者」としてのリーダーの役割とそのコミュニケーション手法についてみてみよう。

 今日のように急速に変化する社会にあっては組織も人も常に新しいことを学習し、環境に自らを適応させていかなくてはならない。古い考えに固執し変化を拒んでいたり、積極的に時代に合わせて新しい価値を提案していかなくては、顧客の要求にこたえられずに血の海(レッド・オーシャン)に沈没するだけだ。

 しかし…。分かってはいるけれどなかなかできないのが世の常だ。「自分だけが何もそんなにあくせくやらなくても大丈夫。それが組織だ」という甘えがあったり、また、今の仕事に忙しくて、環境の変化に気付かず、危機感を持てないことも多い。それに第一、新しいことを学ぶのは面倒くさい。また、何とか、忙しさの山や谷を抜け出して、自分だけは変わる意識を持ち、努力したとしても、組織全体がそうならないと結果は出てこない。

 このように組織全体で新しい環境に適応し、先を行く戦略を生み出し実行していくためには、組織全体がそういう体質に変化していくことが重要だ。すなわち、「学習する組織」に変化することであり、「知識創造企業」になっていくことだ。

 リーダーの大きな役割がここにある。それが「学習推進者」の役割だ。組織のみなが、周囲の環境を認識し、その変化に気づき、積極的に適応するためのアイデアを出し、ゴールやビジョンを創り、改善を実行していく自立自走の組織作りをするリーダーシップだ。ビジョナリーカンパニー2で言われるところの、「第5水準のリーダー」のイメージだ。自分がここの問題の解を示し、指示し、追及しなくても、組織が自発的に問題を探し出し柔軟に適応していく組織能力を構築することに意義を感じるリーダーだ。

場作りのための組織的なしかけとは?

 そのようなリーダーは、みなが学習する組織的なしかけを工夫する。一人ひとりを口説き落とすのではなく、学習するのが楽しいと思えるように仕向けるわけだ。第一線で働く社員たちはみな現場の知恵や気づきを持っている。そんな「現場の知」を出し合い、そこから改善テーマやアイデアを見つけ、実行していく。そんなプロセスの楽しさを体験することで学ぶことがカギになる。やらされ感を持っても長続きはしないからだ。そういう状況を『場』と呼んでもいいだろう。リーダーは「場作りの能力」が必要になるわけだ。

 そのためのコミュニケーションの方策のいくつかを紹介しよう。

(1)ストーリーを語る

自身の過去の改善での楽しかった体験、今回の問題をつぶすことによってどんな素晴らしいことが起きるのか、将来の自分たちにとってどんなメリットになるのか、組織からどんな期待をされているのかを、自分の言葉や体験をベースに物語として話し、意義構築(意味づけ)をする。

(2)アイデアの種をまく

いろいろな突飛な案やおもしろおかしいアイデアでも、とにかく提供し、みなの心の鎧を脱がせてあげる。大胆な発想ができない頭をやわらかくしてあげる。

(3)発言機会を作る

みなを巻き込み、組織全体が学習に前向きになることが大事なため、注目されない人や発言の控えめな人にも発言の機会を作る。学習する組織においては一人ひとりが主役を演じることが大切である。

(4)声なき声を後押しする

いいアイデアは声なき声に潜んでいたりするが、それを評価できないメンバーが多いとかき消されてしまう。そんな様子を観察し、声なき声に適切な評価や、それを出した本人も気がつかないような意味づけを与え、議論の方向を変える。

(5)変革を求める人間を演じる

新しいことに対して批判的にならずに、どう活かせるのかという視点で発想する。「なるほど、それは面白いかもしれない」という枕ことばで、発言するよう心がける。

(6)知の交差点を創る

自分の仕事に引きこもりがちな部下に対して、社内だけの発想では限界があることを口を酸っぱくして言う。自ら、他社の事例や各方面での識者の発言、歴史的な事例などを紹介する役を担う。と同時にみなに社外の知の学習を『強制』する。例えば、ビジネス誌やビジネス本などを具体的に読ませる。

(7)ほめる

いいアイデアや挑戦的な目標設定などをほめる。米国人はよく、"That is a great idea!"とよく言うが、言われたら決して嬉しくなくはないもの。また日本人は厳密な定義にこだわるので、盛り上げ力に欠けがちだ。日本では『改善にすぎない』ような事例でも、米国人は『イノベーションだ!』と喜ばせる。そんな場を盛り上げるコミュニケーションが学習を推進する。

 このようにリーダーはみなを盛り上げ、参加させ、変わることに対して喜びを感じるような組織を作っていくコミュニケーションが欠かせない。そうすれば自分も楽になるわけだ。この不況下ではあるが、こういうときであるからこそ、新年はぜひ盛り上がる職場作りを抱負にしていこう。

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プロフィール

とくおか・こういちろう 日産自動車にて人事部門各部署を歴任。欧州日産出向。オックスフォード大学留学。1999年より、コミュニケーションコンサルティングで世界最大手の米フライシュマン・ヒラードの日本法人であるフライシュマン・ヒラード・ジャパンに勤務。コミュニケーション、人事コンサルティング、職場活性化などに従事。多摩大学知識リーダーシップ綜合研究所教授。著書に「人事異動」(新潮社)、「チームコーチングの技術」(ダイヤモンド社)、「シャドーワーク」(一條和生との共著、東洋経済新報社)など。


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