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日本企業を元気にするビジネスコーチングを問われるコーチング力【番外編】(1/2 ページ)

かつて外資系保険会社で熱血漢あふれる営業マンだった細川氏は、ある出来事がきっかけでコーチングの重要性を痛感する。折りしも会社が吸収合併されることになり、プロのコーチとして歩んでいくことを決意する。

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 プロのビジネスコーチとして独立するまで、外資系生命保険会社で営業をしておりました。幸運なことに、同期の中でも出世頭となり、若くして営業所長を任されることになりました。しかし、これが苦労の始まりでした。部下を持ったものの、マネジメントとは何をするべきなのか、分からず暗中模索の日々でした。

ビジネスコーチの細川馨代表取締役
ビジネスコーチの細川馨代表取締役

 時間が経つにつれて成績の上がらない部下をマネジメントすることに嫌気が差し、マネジメントそのものを面倒に感じるようになりました。自分のモチベーションが下がると、管轄組織の売り上げが減っていくという悪循環に陥りました。

 そんな折、転機になったのはくしくも部下の存在でした。ある日、若手の営業マンが客先から夜遅く戻ってきて、「契約をいただきました!」と嬉しそうにわたしのところへ報告にきたのです。その笑顔を見て、わたしは部下の育成に心血を注ごうと決意を新たにしました。

 ところが、時代は日本の金融危機が叫ばれていた1990年代後半。週刊誌には「危ない生保ランキング」という特集が組まれ、保険業界全体が非常に厳しい状況でした。

 わたしが勤めていた会社もご多分に漏れず、保険の解約が殺到し、契約がほとんど取れない状況でした。何とか打開したいと、わたし自身はさまざまな勉強に励みました。その一つに、アメリカでは管理職必須のスキルといわれていたコーチングがあったのです。

会社倒産で独立を決意

 コーチングで学んだ考え方や手法を自分なりに工夫し、人材育成、会議のやり方、採用ツールなどに取り入れていきました。その結果、部下の一人当りの生産性が300%アップすることになり、大きな成果とともにやりがいを非常に感じていました。

 会社からも注目され、自分の組織で成果が出ていたビジネスコーチングを全社に展開するプロジェクトが立ち上がろうとしていたまさにその時に、会社が事実上倒産し、吸収合併されることになったのです。

 吸収合併をきっかけに、今までの経験をより多くの企業や管理職の人たちに伝え、役立ててもらいたいと思い、独立して2005年にビジネスコーチ株式会社を設立しました。

組織ではなく自分自身が変わるべき

 創業から3年半が経ち、東証一部上場の企業を中心に140社以上の組織の開発に携わりました。生命保険会社で現場に長くいたわたしは、強い現場が会社を発展させるという信念でサービスを提供していきました。しばらくして、当社のサービスを受けた後で業績に大きな変化のみられる企業と変化のない企業が出てくるようになりました。

 その差はどこにあるのか? 原因を調べていくと、企業の経営者やリーダー層が組織開発のプロジェクトの意義を現場に説明し、現場からの意見に耳を傾けるかどうかが明暗を分けていました。プロジェクトを担当者に丸投げした場合には、現場はやらされ感が強く、期待したほどには成果が出ないという結果に陥っていました。

 組織を変えるという思いを経営者やリーダーが持っていても、自分自身が変わらないと現場に対して次のようなメッセージが伝わることになります。

 「悪いのは、お前ら現場だ。経営者(リーダー)であるおれは間違っていない」

 これでは、リーダーと現場が協力して改善していくという風土は生まれません。むしろ、現場を理解せずに物事を強要することで、現場との溝がますます広がります。昨今の企業不祥事の多さを考えても、リーダーが変わることは急務であると認識するようになりました。

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