なぜ日本のリーダーはオバマ大統領になれないのか:問われるコーチング力(1/2 ページ)
米国の新たなリーダーとして期待が大きいオバマ大統領。なぜオバマ氏は国民から高い支持を集めるのか。日本の政治家と比較してみた。
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経済状況の悪化や失業率の上昇などの暗いニュースばかりが報じられる中、1月20日にバラク・オバマ氏が第44代アメリカ合衆国大統領に就任した。その船出は100年に1度といわれる経済危機や泥沼化する国際問題など、さまざまな重りをつけた上でのものとなったが、ぜひ頑張って欲しい。
昨年末のコラムでもオバマ氏について触れた。今回はオバマ氏を見ながら、これからの新しいリーダーに何が必要なのか改めて考えてみたいと思う。
彼を見ていると、国や会社を含めて、これから組織を率いていくリーダーに必要なものは、次の2つだと感じる。
1. 言葉の持つ大切さを理解する――Weメッセージ
2. リーダーは組織の上ではなく、下に存在するということを理解する――縁の下の力持ち
第一に、リーダーは言葉の持つ大切さを理解することが必要だ。言葉には、それを発する人の考えや思いが込められている。だからこそ、その言葉を選んだのは何故か、その言葉が本心なのか、受け手は話し手が思っているよりも敏感に感じ取る。誰かの受け売りでは説得力がなくなり、思ってもいないことを言うと、言葉の端々に本音が見え隠れしてしまうのはそのためだ。リーダーは自分の発する言葉の重要性を意識した上で、言葉を選び、発することが必要である。
自分のことしか考えない日本のリーダー
オバマ氏があれほど人々の心をつかむのは、何よりも彼の言葉が人々の心を揺さぶるからだ。オバマ氏は、常に「わたしたち」「われわれ」(We)という視点で国民に語り掛けてきた。彼が大統領選挙を戦った際に掲げたスローガン――“Yes, We Can.”は、彼の姿勢をよく表している。
一方で、わが国の現在のリーダーは、「わたし」(I)で始まるメッセージを発していることが多い。「解散をするのはわたしだ」と言ってはばからない。わたしが、わたしが、と言う人は、周囲に、自分のことしか考えていないという印象を与えやすい。自分のことしか考えていないリーダーについていきたいと思う人はいないはずだ。支持率急落の一因には、彼のメッセージの発し方もあるように思えてならない。
オバマ氏は大統領選挙に勝利した際の演説で、次のように述べている。
「今こそが大切な時なのです。今こそ、われわれは人々をもう一度職に就け、子どもたちのために機会の扉を開け、繁栄を取り戻し、平和という大義を推進し、アメリカンドリームを再生すべきなのです。そして、再認識すべきなのです、基本的な真理を。すなわち、多数から一つへであり、われわれは一つなのだということを。息をし続ける限り、われわれは希望を持ち続けるのだいうことを。われわれが冷笑主義と疑いで応じられる場所や、われわれにはできないと言ってくる人たちに対して、国民の精神を端的に表す不朽の信条でわれわれは応じます。大丈夫。われわれにはできると」
[出典:『オバマ演説集』(朝日新聞出版社)P.83]
このように「われわれ」という視点で語りかけてくれたら、人々はついていきたい、この人を信頼して賭けてみたいと感じるだろう。実際にこの演説を聞いて、多くの人が涙したという。彼は人の心をつかみ、一緒に頑張っていこうという気持ちを引き出すことがとても上手だ。
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