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「日本企業はもっと決断を早く」――太公網・慕社長(1/3 ページ)

中国でコールセンターを運営する敏腕女性社長が語る、日本企業が中国人と上手にビジネスを進めていくためのコツとは?

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 全世界を巻き込んだ景気停滞によって、企業は待ったなしのコスト削減を迫られている。「実はアウトソーシング先の企業にとっては追い風」と、トランスコスモスのグループ会社である北京太公網科技発展有限公司の慕紅雲社長は意気込む。中国のコールセンターの現状、日本企業が中国でビジネスを成功させる秘けつを聞いた。


――北京太公網科技発展有限公司の概要を教えてください。

 中国に進出する日系企業の業務のアウトソーシング先として、コールセンターを中心としたサービスを提供しています。拠点は北京と延吉(吉林省)の2カ所で、北京ではコールセンター業務のほか、システム構築やコンサルティングなどを手掛けています。延吉では主に日本語のBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービスを提供しています。顧客はキヤノンやエプソンをはじめとする製造業、自動車会社、IT企業などです。


――コールセンター運営に必要なSP(サービスプロバイダー)ライセンスの保有を強みにしています。中国でライセンスを取得するのは難しいのですか。

北京太公網科技発展有限公司の慕紅雲社長
北京太公網科技発展有限公司の慕紅雲社長

 中国でコールセンターを運営するには政府からの許認可が必要です。ライセンスには、省内限定のライセンスと全国ライセンスの2種類があります。後者は省を越えた中国全土での呼転送が可能で、「95」という特番が付与されます。中国の電話番号は8桁で、当社は95177を取得しており、その後ろにつく3桁の番号は自由に数字を割り当てることが可能です。従って、最大1000社まで電話番号を提供できるわけです。番号が変わらないためどの地域にコールセンターをつくってもいいですし、ユーザーは市内料金で電話をかけることができます。

 資本金1000万元(約1億5000万円)以上、全国15都市以上に拠点を持つ会社だけがライセンスを申請する権利があります。ただし、審査が厳しく申請してもほとんど認可されないのが現状です。ご存じのように中国では人脈が重要で、大手企業や航空会社など政府とつながりのある企業が強いのです。当社はベンチャー企業であり全国各地に拠点を構えていないのですが、人脈を生かし、日系企業向けにコールセンターを運営したいとアピールしたことで認可が下りました。

日中のサービスの違いにショック

――2001年に太公網を設立する以前は、日本でNECに勤務していました。独立した理由は何ですか。

 わたしは1988年に日本に留学し、その後NECに就職しました。当時の中国はサービスという観念がまったくなかったので、日本に来て「なぜこんなに違うのか」とショックを受けました。元来中国人は客をもてなすことが好きなのに、それがサービスには結び付いていませんでした。もっと中国のサービスを良くしようという思いをずっと抱いていました。NECでは通信サービス関係の仕事に携わっていたので、そこでの経験も役に立ちました。


――コールセンターのオペレーターに対する日本語教育はどのように行っているのですか。

 延吉は朝鮮族が多く住んでおり、実は日本語教育が盛んな地域です。留学する人も多く、延吉市内には3000もの語学学校があります。中学校から第一外国語は日本語ですし、朝鮮語と日本語は文法が同じなので習得が早いです。大卒だと最低で10年間は日本語を勉強していることになるため、3カ月も教育すれば業務に支障のない日本語を話せるようになります。

 教育方法は、NHKニュースやドラマを観て日常で使われる言葉を習得するほか、日本語検定や現場のクレーム事例集などを教材にしています。日本語を学ぶとともに日本人の感性も知ることができます。

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