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史上最悪の事態が続く日本経済、「坂の上の雲」に景気回復を託す景気探検(2/2 ページ)

今年の大河ドラマは最終回が11月に前倒しとなり、日本人に愛される作品の1つである司馬遼太郎「坂の上の雲」のドラマが放送される。強い時代の日本に思いをはせ、景気回復を祈る人も多いだろう。

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不景気に対する調整スピードは速い

 ただし今回の景気悪化局面は、従来と異なり調整スピードは速い。今回は出荷の落ち込みに合わせ生産が減少していることが特徴である。12月速報分では生産の9.6%減に対し、出荷指数の前月比は8.0%減である。そのため在庫指数は前月比+0.1%の小幅増加にとどまっている。鉱工業出荷指数を横軸に、鉱工業在庫指数を縦軸に在庫サイクル図をかいてみると、従来は左ななめ上方にサイクルが動くところが、ほぼ左横方向に動いている。これは輸送機械工業などを中心に在庫調整が既に進展しているためとみることもでき、将来需要が増加すれば、生産が持ち直しやすいことを意味しよう。

 「景気ウォッチャー調査(2008年12月調査)」のコメントの中に、東北の一般小売店(医薬品)が「年金暮らしの客が多いためか、ガソリン価格が異常に高く、物価も高騰していた数カ月前の方がより深刻であり、ニュースなどで報じられる状況ほど悪くはない」という意見があったが、身近なデータ的には、まだ生産など経済指標に比べ、悪いながらも底堅い面がある。

急成長を遂げた明治の日本に思いをはせる

 今年正月三が日の初詣の人出の数は、警察庁の発表によると9939万人で史上最高になったものの、前年比で1.2%増と比較的小幅増加であった。苦しい時の神頼みという人が増えた可能性があるが、増え方は大きくはなかった。1月3日の箱根駅伝のテレビ視聴率は27.5%で前年を0.2%ポイント下回っていた。従来、景気が悪いと外出を控える人が増え視聴率が上昇しやすいが、今年は違ったようだ。初詣に行った人もいるが、福袋を買いに外出した人などもそれなりに多かったのではないだろうか。

 大相撲初場所の懸賞は955本で前年比11.4%減だった。3場所連続前年割れで企業の広告費が落ちていることを示唆する数字だ。しかし、千秋楽結びの一番、白鵬VS朝青龍戦には46本と史上第10位の懸賞がかかっており、さほど大きく悪化したという印象でもない。一時、景気悪化になり増加するかにみえた金融機関店舗強盗も2008年11月下旬から12月中旬にかけてはほとんど発生せず、人心がまだそれほど荒んではいないことを示唆していよう。

 今年の大河ドラマ「天地人」は、最終回が初めて11月に放送される。11月22日に「天地人」が終了した後は、スペシャル大河ドラマとして「坂の上の雲」の第1部が放映されるそうだ。司馬遼太郎原作のこのドラマは、日清・日露戦争があった明治時代の日本の昇り坂を描く。主人公の秋山兄弟たちの活躍に多くの日本人が元気付けられ、景気持ち直し支援要因になることを期待したい。


プロフィール

宅森昭吉(たくもり あきよし)

「景気ウォッチャー調査研究会」委員。過去に「動向把握早期化委員会」委員、「景気動向指数の改善に関する調査研究会」委員などを歴任。著書は「ジンクスで読む日本経済」(東洋経済新報社)など。


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