社内に寄生するアンチIT社員たち:間違いだらけのIT経営(1/2 ページ)
企業でのIT導入を遅延させるアンチIT族の存在は厄介だ。特にこれが組織において上の立場であればあるほど問題は大きくなる。しかしながら、傍若無人な振る舞いはそう長くは続かない。
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IT導入を成功に導くための秘けつをこれまで検討してきた。今回は、積極的にITに反旗を翻す抵抗勢力など、いわゆる獅子身中の虫であるアンチITの立場からの議論を進める。反対の立場であるITを推進する側にとっても参考になるはずだ。
アンチIT族は、主に4種類に分けられる。まったくの無関心、IT嫌い(ITが怖い)、感情的反発者、従来業務に固執する者である。いずれも手ごわい。具体的なイメージを描くために、それぞれ例を挙げながら説明していこう。
まず、無関心についてである。某大企業A事業所のB調査課長は、いつもニコニコし、部下をしかることもなければ、業務方針を示すこともない。ただ、課の親睦会や忘年会など事業所の行事には、B課長はまるで日ごろの無能力さの埋め合わせでもするかのように気前良く多額の金一封を寄付するのが常だった。要するに、お人よしなのだろう。
A事業所でERP(統合基幹業務システム)を導入することになったとき、B課長はまったく関心を示さなかった。ERPプロジェクトチームに人材を投入するというノルマに対しても何ら指示を出さず、係長に任せっぱなし。プロジェクトメンバーからの進度報告に対してもただ聞きおくだけで、まさにのれんに腕押しだった。無関心さ加減は、見上げたものだった。
最後まで無関心でいればいいのに
B課長のケースとは別に、日ごろの仕事を人並みあるいはそれ以上にこなすのにITに無関心というタイプがいる。ITを重視していないために無関心なこのタイプを仮にCタイプとしておこう。もう一つ、ITにどうもなじめない、あるいはITに近寄るのが怖いという理由で無関心を装う場合がある。これは後述するIT嫌いに相当する。
さて、BおよびCタイプの場合は強い信念があって無関心を決め込んでいるわけでないので、システムが稼働を始めると成り行きでITを使い始める。ITについて無理に関心を持とうとしても、Bタイプにはできない。CタイプはITの重要性を説得されても、いっさい聞く耳を持たないことが多い。彼らは徹底して最初から最後まで無関心を貫くべきだ。それによって部下や周囲が力を発揮し、鍛えられる。
IT嫌いの例を見よう。キーボードや画面が怖い、IT用語を受けつけないというタイプだ。年配者に多い。
某中堅企業のD部長はパソコンが怖くて使えない。定年退職まで残り2年なので今さら覚える気はない。本来ならば自分がやるべきデータチェックやメール送受信などを若い部下にやらせていた。部下が部長のパスワードを知ることになるから大問題だ。そのことが経営幹部の耳に入り、D部長は部長職を外され、閑職に回され、やがて早期退職した。
部下がいなくてパソコン業務の押し付け先がない年配の担当者はもちろん、Dのような管理職も結局逃げ道がないのだから、早々にIT無能者であることを告白して、閑職を望むか、早期退職を申し出るべきだ。
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