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社内に寄生するアンチIT社員たち間違いだらけのIT経営(2/2 ページ)

企業でのIT導入を遅延させるアンチIT族の存在は厄介だ。特にこれが組織において上の立場であればあるほど問題は大きくなる。しかしながら、傍若無人な振る舞いはそう長くは続かない。

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役職を奪われ感情的に……

 感情的反発者とは、ITそのものに対する反発でなく、人間関係からくるトラブルでアンチITを決め込むタイプだ。某中堅企業のE経理部長はCIO(最高情報責任者)だったが、親会社から派遣されて取締役企画室長になったFが代ってCIOに就任した。狭量な性格のE経理部長は不愉快だった。F企画室長が次々打ち出す情報システム関連の改革がますます面白くなく、社内で隠然とアンチF、アンチITの姿勢を打ち出した。表に出ない潜航アンチなので、関係者は困惑した。

 E経理部長のことはやがてトップの耳に入り、E経理部長はトップからF企画室長への協力を強く指示された。しかし、E経理部長のF企画室長に対する批判は、表から見えないところで尾を引いた。

傍若無人な振舞いも今のうち

 最後は、IT導入により業務プロセスが標準化され、当社の良さがなくなるとして、従来業務に固執するタイプだ。某中堅企業のG営業部長は、当社の業務プロセスが他社より優れていると信じ込んでおり、CRM(顧客情報管理)パッケージ導入にことごとく反対した。そうかと言って、G営業部長のカスタマイズ要求に応じると説得しても、要求は何も出てこなかった。

 CRMが稼働を始めると、G営業部長はシステムに指一本触ったこともないくせに、部下の話を小耳に挟んでは機会あるごとに「入力が面倒で使いものにならない」、「データが信用できない」とシステムを批判した。社内で実力者のG営業部長の発言は重く、そのつどトップはシステムの見直しをシステム部門に命じた。システム部門や関係者は大変迷惑した。G営業部長は、やがてCRM定着化チームのリーダーに任命され、CRMに協力せざるを得ない立場に立たされた。G営業部長は苦笑いしながら、与えられた任務を遂行するしかなかった。

 組織の中でITに反発する人間は、どんな理由であれしょせん少数派だ。最終的に大勢に従わざるを得ない運命にあるのだから、理屈に合わない感情論でも、守旧的理屈でも、気の済むまで押し通したらいいだろう。

 アンチIT族の存在はIT導入の進度を遅らせることになる。以上の例で触れたように最終的には、無関心派は多数に迎合して稼働後のITに協力するのだし、IT嫌いは企業内で生きて行けず排除されるか自ら身を引くことになる。感情的反発者の稚拙な行為はいつまでも認められるはずはないし、従来の業務に固執する者は力ずくで組み込まれてしまうのだから、せいぜい思うままに振る舞って、あくを抜いたらよかろう。それが結果的にITをうまく進める道かもしれない。


プロフィール

増岡直二郎(ますおか なおじろう)

日立製作所、八木アンテナ、八木システムエンジニアリングを経て現在、「nao IT研究所」代表。その間経営、事業企画、製造、情報システム、営業統括、保守などの部門を経験し、IT導入にも直接かかわってきた。執筆・講演・大学非常勤講師・企業指導などで活躍中。著書に「IT導入は企業を危うくする」(洋泉社)、「迫りくる受難時代を勝ち抜くSEの条件」(洋泉社)。


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